せめて居場所だけでも聞こうとするんだけど、健太は怖いバッカ言うんだ。
気が動転しているんだろう。
俺の声なんてまるで聞いていない。
けど俺の声が途切れると、必死に名前を呼んでくる。
恐怖心と懸命に闘っているらしい。
だから俺は呼び掛けに答えてやるんだ。
大丈夫だから、声は届いているから、どんな無茶な相談でも乗るから。
呼び掛け続けると安堵したような声、次いでプッツン、ツーッ、ツーッ、ツーッ。
「はい?! ちょ、健太! 健太!」
ここで電話が切れるとかないぜ!
俺の携帯の充電は大丈夫だしっ、ええいもっかい電話だ!
アドレス帳から電話番号を呼び出してコール。だけど何度電話しても出ない。
ああくそっ、どうしよう、俺の方が焦ってきたじゃないか!
どうする、何度電話しても相手は出ない。
だけど俺じゃあ健太が何処にいるのか、この三日間どうしているのか、それさえも分からない。
一度家に行くべきなんだろうけど、あいつが家にいるかどうか。あいつの家はゲーセンから遠い。
最短ルートで健太に会いたいんだよ俺は! ってことは…、健太の近状を知っていそうな身近な人物達のところにしかなくて。
そっちの方が近…っ、ちかっ、うわぁああああ!
くっそぉおおおっ、迷っている場合じゃないんだよど阿呆! 男見せたれ、トラウマなんてクソ食らえぇええ!
俺は携帯をチャリのカゴに放って、鍵を引っ手繰りだす。
今回ばっかは自分のチームに頼れない。
俺一人で解決できるとは毛頭も思わないさ。
でもこれはヨウ達に頼るべきことじゃない。
あいつのチームに頼るべきこと。
健太が嫌がろうと、もう強行手段に出るからな俺。
わっざわざトラウマに会いに行くんだ。寧ろ感謝しやがれよドチクショウ!
大丈夫、もしもチームが動かなかったら俺が自分のチームに頭を下げて頼むさ。
友達のピンチを救いたいから、手を貸してくれって。
それでも駄目なら俺だけでもあいつの味方になるさ。
だってあいつは俺の大事な友達、友達だから!