【必ズ迎エに行キマス】



ワープロで打ったであろう、印刷された一行文字に俺は身の毛がよだつ。

なんだよこれ。気持ち悪い。

まんまストーカーのすることじゃないか。


俺は健太に視線を流す。

掻いた胡坐に視線を落とす健太は、

「郵便受けに入っていたんだ」

自分宛ての手紙だったのだと苦言し、誰に愛されちまったんだよおれ…、と額に手を当てた。


「いつからだよ?」


腫れ物を触るような声で問い掛けると、

「二週間くらい前から」

もう病みそうなのだと健太は重々しい溜息をつく。


んで、俺の両肩をガシっと掴み、ぐわんぐわん揺すってきた。
 

「怖くね怖くね怖くね! もぉおお、おれ、ホラー小説の世界にでも飛び込んじまったのか?! って思うほど怖くてさ!
圭太ぁあああどうしよぉおおお! 迎えってどこだよ! 天国? それとも地獄?! おれ、そんなに悪いことしちゃないっ、ちょっち悪ぶった地味くんだぜ!」


「お、お…落ち着けって!」


「落ち着けるかぁああ! おぉおおおれ! 女の子にモテるならまだしもっ、得体の知れない輩にっ…ぎゃぁああああ怖過ぎる!」
 

ずっと我慢していたのか、健太が半狂乱になって俺の体にしがみついてきた。

ガタブルで死にたくないと震えている。

どんだけお前は我慢していたんだよ。


どうどうと宥めながら俺は相手の体を押し返して手紙を一瞥、四つ折りにして健太に返しながら、誰かに相談はしなかったのかとクエッション。


こんなこと誰にも言える筈ないじゃないか、健太は唸りながら紙を受け取り、ポケットに捻り込んだ。


それこそチームに相談すれば良かったじゃないか。

日賀野に相談すれば、きっといい知恵を貸してくれる筈だぞ。

あいつは策士だから、絶対解決法を見つけてくれると思うんだけど。


俺の助言に健太はできないのだと吐息をつく。

チームには相談できないと頑なに助言を拒む始末。

理由を尋ねると、「おれ個人のことで」チームに迷惑を掛けたくはない。


健太は力なく答えて、食べかけの海草サラダに目を落とす。