一部始終傍観していた健太は、微苦笑を零しながら俺に割り箸を回して、


「お前いつの間に」


勇者になったんだよ、とおどけてくる。


馬場波子は中学時代は自他共に認める苦手女。

喧嘩を売ってはいけない、関わってはいけない、反論してはいけないの三原則が暗黙のルールであったというのに、それを敗れるなんてお前は勇者だ。健太は隣で不貞腐れている俺の背中を叩く。


「煩いなぁ」


俺だって好きで勇者してるんじゃない、向こうが喧嘩を売ってくるから買っているだけだと唇を尖らせた。


「あ、田山田コンビじゃんか。ん? 山田山コンビ? まあどっちでもいいや。久しぶりだな、お前等」


前方から声を掛けられる。

俺と健太は視線を上げ相手を確認。揃って武藤じゃんかと頬を崩す。


俺達に声を掛けてきたのは武藤 秀弥(むとう ひでや)。

中学時代につるんでいたジミニャーノくんだ。

超背が高いんだ。
180超あるんだぞ。

何を食えばそんなにでかくなれるんだろう?

特別すごい運動をしていたわけでもないのに。

ちなみにこいつ、めっちゃギャルゲーするオタクさんだったりする。

ぱっと見そんな感じじゃないんだけどな。

こいつのお嫁さん(ゲームキャラ)を幾度となく見せてもらったことがある。

熱弁させると止まらなくなるから、俺も健太もあんまりお嫁さんについては触れないんだけどな。
 

武藤の隣には眼鏡をかけたぽっちゃりくん、東島 瀬那(とうじま せな)の姿も見受けられる。

こいつも俺達とつるんでいた日陰男子で親しみやすい。

やや肥満気味なのは実家が和菓子屋だからだ。

本人曰く、体躯の七割は砂糖でできていると冗談を口にしている。


ダイエットをする気はさらさらないらしい。

寧ろダイエット本なんて滅べばいいとか。

恐ろしい奴だ。
また一回りでかくなったんじゃないか? 縦にも横にも。