「うわぁあ圭太」

馬鹿正直に言いすぎだろ、健太のツッコミは俺の耳には届かない。
 

うぇっと毒舌の波子に舌を出し、腹が立つとキャツは俺を睨んでくるばかり。

ダサイ格好だと毒づいてくる毒舌女に、じゃあ普段の学生はダサイということですね? と減らず口を叩いてみせた。

なにせ、普段の学生さまは制服を身に纏ってらっしゃるのですから!


それともなんですか、貴方様はダッサイ制服を着ず、私服で登校していらっしゃるとでも?

それこそダサイのお笑い種だと思うのですが!


「たまたま制服で来た。それだけでダサイだのなんだの人権を侵害してもいいのかどうか、俺には分かりませんね。ああ、分かりません」

「なによ、不良のパシリしてるくせに。あんた不良グループに入って、態度をでかくしてるだけなんでしょ?」

「俺の何を知っていらっしゃるんですか? 俺に一々突っかかるのはやめてください。俺も毒舌と相手するほど暇じゃないんで」


俺が嫌いならそれで結構。どうとでも陰口を叩けばいい。相手にしませんので。

火花を散らし合い、フンッと鼻を鳴らして俺は健太の腕を取ると、ずんずん足音を鳴らしてキャツから離れた。


「ムッカツク―――ッ!」


ヘボのくせにっ、絶叫を上げる毒舌の波子なんて無視無視。

そう、むしがいちばん…、ウワァアアできるかぁああ!

俺は聖人じゃねえぞ!
悟りなんて開けるかぁああ!
  

「腹が立つ―――ッ!」


俺は俺で声を上げて大きく地団駄を踏む。

あいつがクラスメートだってことをすっかり失念していた!

ああぁあ、あいつが来るなら、マジで同窓会になんて来なきゃ良かったぜ。

健太とランデブーした方がずっといい!


もう抜けちまいたいっ、胃袋がストレスで悲鳴を上げてきたっ!


怒りに燃える俺は握り拳を作って帰ると踵返した。

「ちょっ!」まだ集合したバッカだぞ! 健太に全力で止められてしまう。
 


こうして帰ることに失敗した俺は、クラスメート共に昼飯を取る予定になっている焼肉店に行くわけなんだけど。

俺の機嫌は低空飛行も低空飛行。

神様とやらは俺のことが本当にお嫌いらしい。

食べるテーブルは三席に分かれるんだけど俺と毒舌の波子、三分の一の確率で物の見事に同テーブルになったんだ。

席こそ遠く、着席する人がバリケードになってくれているから嬉しい限り。


だけど斜め前にキャツの姿が映る。

それだけで俺の機嫌は不そのものだ。


視線がかち合うとお互いに舌を出して、そっぽ向く始末。

もうあいつとはぜってぇ話さないぞ。