モトとキヨタの考えに、嫌々ながらも賛同する舎兄弟組は早々と踵返した。

自分達と同じ空気を吸いたくないというのもあるようだが、指定地で舎兄を待たせているというのもあるらしい。

舎兄をいつまでも待たせていたら、心配してしまう。

ブツクサと文句垂れながら川瀬と谷が階段に足を掛けた。


すぐ足を引いたのは、この直後。

眉根を寄せて、「足音が聞こえる」しかも一つじゃない、川瀬がポツリと言葉を零す。

反射的にモトとキヨタはココロを連れて三階へと上り始めた。

それを合図に舎弟組も階段を上り始める。


どう考えても建物関係者だとは思えない、ここはスリの仲間だと考えるのが筋だ。

 
「複数は不味いぞっ。四、五人ならどうにかなるかもしれないけど。十人とかで来られちゃ」

 
モトの意見に同調するキヨタは、とにかく上にのぼって足音の正体を見極めようと二人に告げた。
 

「それがいいかもな」

「だな。千草」


何故か返事をしてきたのは舎弟組だったりする。


なんであんた達が一緒の方角に逃げてくるのか、別の方角に逃げればいいのに。

脹れ面を作るキヨタだが、モトは意外と冷静だった。


同方角に逃げてくれるなら、こっちとしては有り難い。


敵方の人数が多かった場合は、こっち側に味方付いてもらえるのだから。


成り行きではあるが必然的に味方側にはなってくれる筈だ。


「えー?」信用できるのか、ご尤もな意見を受け止めつつ、「状況をよく見てみろ」モトは反論する。


「この状況でオレ達と対峙してもイイコトなんてないだろ? あるとすれば、オレ達をダシにしてのトンズラだけど…、その時はその時。どうにかするしかねぇ!」

「モト…、適当だな」


「ケースバイケースだろ。とにかく今は相手の出方を見ることに集中だ」
 

どこぞの誰か分からないが、此処で喧嘩になるのはアウェイ側の自分達にとって不利なこと極まりない。味方は多い方がいい。