「スリの人はいないですし、お財布は故意的のように落ちていますし。……何なんでしょうね、不気味です。誰かの財布と一緒になっていることが、また不気味で」
 
「確かに不気味っスね。もしかしてやっぱり何かの罠っ…、足音が聞こえる」
 

キヨタが背後を振り返る。

反射的にココロを背に隠すモトとキヨタは、自分達がのぼってきた階段を睨んだ。


来るのは此処をたむろ場にしている不良か、それともさっきのスリか。はたまた青髪をした不良…、ゲッ! あれは!


のぼってきた青髪不良二人に、モトとキヨタは顔を引き攣らせる。

同じく表情を引き攣らせ、「「あー!」」短髪青髪と髪を一つに結っている長髪青髪が声を揃えて指を差した。
 

「お前等はあんちゃんを侮辱したっ! 阿呆二人組!」

「アンちゃんのカッコ良さを、全然分かっちゃいない小癪な後輩達じゃんかよ!」


現れたのは二人のブラックリストに載っている矢島の舎弟達である。

ちなみに短髪側が川瀬 千草(矢島のことをアンちゃんって呼ぶ)。

長髪側が谷 渚(矢島のことをあんちゃんって呼ぶ)である。



お前等がなんで此処にいるんだとガンを飛ばす舎弟達に、ケッとモトは鼻を鳴らした。



「お前等はヨウさんを馬鹿にしやがった、ブサイク兄貴の舎弟達じゃんかよ」
 
「あの時はケイさんをよくも侮辱しやがったなっ…、あぁああ腹が立つっ! お前等の舐めた言動っ、思い出しただけでもウワァアアストレスだ!」
 


地団太を踏むキヨタは、なんでよりにもよってお前等が現れるんだと絶叫。