閑話休題。

スーパーに足を運んだ三人は自動扉を潜る。

まずは飲み物売り場に行きましょう、先導するココロが首を捻って一笑。


直後のことだった。

ココロは前方から駆けてきた青年と衝突。

邪魔だと言わんばかりに体を押され、ココロは危うく尻餅をつきそうになる。


間一髪でモトが支えに回り、「なんだよ!」アブネェな、と相手に舌打ち。

気を付けろよ、キヨタも相手の無礼に鼻を鳴らした。


自動扉を掻い潜った青年はといえば、立ち止まって観察するように此方を睨んでいる。

私服姿だが年齢は自分達と変わらないような。

手には青年に似合わない花柄の薄紅財布がおさまっている。

ん、花柄の薄紅財布?

男のクセにあんな洒落た財布を、「アッー!」モトに支えられていたココロが血相を変えた。


「あ、あれ、私のお財布! い、いつの間に」

「は?! じゃあ、あいつっ…、あ、お前! ちょっと待てよ!」


スリかよクソッ!

モトは逸早く自動扉を掻い潜った。気付かれたと分かるや否や青年は一目散に駆け出した。

「逃がすか!」モトが絶叫し、

「財布返しやがれ!」キヨタも後を追う。

「ま、待って下さい!」私だけ此処に置いて行かないで下さい、


慌てたココロも後輩の後を追うためにBダッシュ。
買い物客の視線を振り払って走り出した。



「モト。あいつ、おかしいぞ」

「ああ。オレも同意見だ。なんなんだアイツ」
 

   
一歩リードした形でスリの後を追うモトと肩を並べたキヨタは、率直にあのスリはおかしいと物申す。

同調するモトは逃げるスリの背を睨んで、ただのスリじゃないと舌を鳴らした。

何故そう思うか。

本当にただのスリならば財布を盗んだ際、自動扉向こうで自分達のことを観察などしたりしない。


財布を抜き取ってそのままトンズラするだろう。それが筋である。


なのにあの青年はココロの財布をスッた後、一旦立ち止まって自分達の行動を観察した。


いや、追い駆けてくるよう唆したというべきだろうか。行動の節々が気に食わない。


どちらにせよ、スリはスリ。

とっ捕まえて張り倒さなければこっちの気が済まない!