「そうですけど」
なんで分かったんですか、ココロが素で驚いた。
行くつもりだったんかい!
二人のツッコミを受ける彼女は、勿論買い物もする予定だったと唇を尖らせる。
でも、彼氏の家にも行くつもり。
でなければ、なかなか彼氏との時間が作れないのだとココロは不満を漏らす。
「ケイさんって忙しい人なんで私から歩まないと、構ってもらえないことが多いんですよ。
ちゃんと気遣ってはくれるんですけど…、全然足りません。
パッと目を放せば舎兄さんのところへ。
パッと目を放せば弟分、男友達、喧嘩!
敵はいっぱいです」
「敵視してるんっスか?」
「そういう風になっちゃいますよ。ケイさんは優しいですから、なにかと私を気遣ってくれます。
でも言いたいことは言わないと相手に伝わりません…、何も言わず分かってもらおうとするところは私の短所です。
ケイさんに構って欲しいなら、ちゃーんと自己アピールしないと!
最近ではうぅうっ…、絶対にあの子、狙ってます。
あんなに簡単にアドレス交換してっ、わ、私はとても苦労したのに!」
悔しいっと両手で拳を作るココロに、後輩二人は唖然の呆然。
彼女らしからぬ態度に呆気に取られるしかない。
「ココロって」
そんなに自己主張する奴だっけ。
おとなしくて清純じゃ…、モトがおずおずクエッション。
「嫌ですもん」
誰かに彼氏を取られたくない、ココロはぶうっと脹れ面を作って返事。
「私、清純じゃありませんよ。好きな人のことじゃ我が儘いっぱいですもん。
堤さんって子がケイさんの後輩で、習字が繋がりがあったとしても…、私、負けたくないんです。誰が相手でも負けたくないですよ。絶対負けません。
―――…こんなことが思う私って、カッコつけ舎弟さんの負けず嫌いが感染ったのかもしれませんね」
一変してはにかむココロは、話は終わりだと軽い足取りで先を歩く。
差し入れは何を買おうかな。
ケイさん、コンソメ好きだからコンソメポテチにしようかな。
そんな独り言を口ずさんでいる舎弟の彼女の背を見つめ、
「ココロさん。強いなぁ」
「てか、ただのノロケだって」
キヨタとモト、しみじみと各々の感想を述べる。
「誰にも負けたくないっか。ココロさん…、カッケーな」
熱心にココロの背を見つめていると、「やめとけ」モトが意味深に肩に手を置いてきた。
「ココロに惚れちまってもさ。昼ドラになるだけだってキヨッ、アイッデー!」
モトの余計な台詞が悲鳴に変わったのはこの直後だったりする。