ニコーッと後輩達を見つめる響子は、散々脅し文句を零した後に白々しく、「手伝ってやってくれね?」と頼んでくる。
おろおろするココロは断っても大丈夫ですよ、と言ってくれるが、所詮妹分の発言など一抹も効力はなく。
一杯の脅し文句と含みある笑顔を浴びせてきた響子に、モトとキヨタはドッと冷汗。
へらへらっと愛想笑いを浮かべた後、
「んじゃあ」
「行こうッス!」
そそくさとココロを誘ってその場から退散。その際、響子に痛烈な一言を浴びせられる。
「ちゃーんとココロの手伝いをしっかりするんだぜ。野郎共」
じゃねえとどうなるか、分かってんだろうなあ゛ーん?
背後から聞こえてくる指の関節音。
パキパキっと指を鳴らされ、モトとキヨタはサァーッと青褪めながら元気良く返事。
彼女を連れて今度こそトンズラしたのだった。
「すみません。そこのスーパーに行くだけだったんですよ、私」
申し訳無さそうに謝罪してくるココロは、自分達に何処かに行く予定だったのではないか。行って来ても大丈夫だと気遣ってくれる。
「いいんだよ」
モトは力なく笑った。
どうせ予定という予定ではなかったし、あんなに脅されてしまったのだ。
引き受けらざるを得ない。
この場でココロを置いて何処かに行っても、後で響子にどんな仕置きを受けるか。彼女の張り手を想像したモトは無意識に身震いをする。
「それに」ココロさんは俺っち達のために動いてくれてますしね、キヨタは彼女の気配りを褒めた。
いつもチームのために進んで世話係を買ってくれているココロ。
こっそりとたむろ場を抜け出してジュース等々を買って来てくれる彼女の心遣いには、感謝しなければならない。
喧嘩している際だって、絆創膏や湿布などを準備してくれているし、彼女はチームにいなくてはならない存在だ。
褒められたココロは照れ照れに笑い、「これが私に出来ることですから」と言葉を返してくる。
「私は喧嘩とか、それまでの戦略とか、情報収集とか。そういう時は役に立たないので。せめて過ごしやすい環境を作ろうと思いまして」
「カットバンが欲しいって言ったら、ココロはすぐ出してくれるしな」
よく皆を見ているもんだ、モトは感心だと口笛を吹く。
「だって見てないと」皆、怪我のことを我慢していたり、怪我を放置するから、彼女は表情を和らげた。
皆と言っているが、それは彼氏に対して言っているのでは?
モトが茶化すと、ココロは頬を桜色に染める。
「ケイさん…、やせ我慢ばかりするんですもの。だから、その…、ちゃんとお世話しなきゃって。私の彼氏さんはカッコつけさんの舎弟ですし」
「あーあーあー、アツイねぇ。本当は買い物行く振りして、ケイの家にでも行くつもりだったんじゃねーの?」