そりゃそうだけどさ、んー、どっかで会ったことあるような気がするんだよな。
はて、何処だろう。気のせいならいいんだけど。
キヨタの言うように、会っていたら嫌でも忘れないよな。気のせいだろう。
それにしても寒気がとまらないな。
どんだけビビッていたんだろ、俺。
二の腕を擦っていると、それに気付いたキヨタが大丈夫だと綻んできた。
硬貨を投げ、仮に何か遭っても自分が全力で守る、綺麗にそれをキャッチした弟分が得意気に発言。
手腕だけが自分の取り得だと付け足す弟分に、
「守るじゃなくて」
俺は微苦笑を零して支えてくれ、と助言した。
守ると支えるは違う。
キヨタには俺の背中を支えて欲しいんだ。
寧ろ、守らなきゃいけないのは兄分の俺の方。
―――…俺にもっと手腕があればな。
ヨウみたいに手腕があれば、堂々とキヨタを守るって言えるのに。
大きな劣等感が占める。
不良の世界を知れば知るほど、のめり込めばのり込むほど、自分の力量をまざまざと見せ付けられる。
俺には不良の世界は向いてないのかもしれないな。
だから俺はキヨタに堂々と守る、なんて言えない。
だって俺はこの手で大勢の奴等を守れるほど力量なんてないんだから。
そう、守るは言えない。
言えないけど、どうしても一言伝えたいことがある。
「キヨタ」俺を守るんじゃなくて、支えてくれな、と。
違いがよく分からないって顔をしているキヨタに、「俺には支えが必要なんだって」とグシャグシャに頭を撫でる。