なんかメンドクサイ奴に捕まったな…、逃げるっての手だけど、まあ、害はなさそうだし、答えておくか。言わないといつまでも付き纏われそうだ。

「表」俺の答えに、「OK」そいつは口角をつり上げて重ねている手を取った。

硬貨の面は俺達からは見えないけど、口笛を吹いてそいつは硬貨を指で挟み、その面をこっちに見せてくれた。


ゲーセンの硬貨なのか、それとも海外の硬貨なのか、それは百円玉じゃなさそうだ。
 

「ジョージ・ワシントンが載った面。お見事、表だね。
ちなみに裏はワシ。25セント硬貨を見たことは? アメリカじゃドルのクォーター分の価値を持つんだけど」
 

あるわけナーイじゃないですか。
 
俺は生まれてこの方、ジャパンから出たことがないんだからな!

旅行したことあると言えば、あー、大阪と福岡、それから長崎くらいだな。

国内旅行しかしたことのない俺だから、当然海外の硬貨なんて触れた事がない。

今だって俺、アメリカのお金に「なんで50円の半分の金があるんだ?」って首を傾げるぞ。

25円なんて半端だよな、計算し難いっつーか、細か過ぎるのも難点っつーか(皆も思ったこと無いか?)。


あ、ちなみにこれ、日本円に換金して考えているんで夜露死苦なんだぜ!

 
……で、結局これは一体?


「ふふっ、当てたってことは君は運がいいんだね。そっちのチビ助くんはどうかな?」

「なんだよアンタ! 初対面の人間にめっちゃ失礼だぞ! ケイさんっ、ちょっち俺っち喧嘩してきてもいいっスか!」

「き、キヨタ。落ち着けってっ。あんなの嫌味にも入らないぞ! 毒舌の波子を思い出せ、あいつの毒に比べたら全然だろ!」


「だぁああってぇええ!」


だぁああってぇええじゃあーりません、我慢しなさい!


突進していきそうなキヨタを羽交い絞めにしていると(暴れるなって。お前の方が力強いんだから!)、そいつは小さく笑声を漏らして硬貨を親指へ。


手早く指で弾いてきた。
 

キヨタは俺の手から抜け出すと、大きく放物線を描く硬貨をキャッチするために足を踏み出す。


見事に両手でキャッチしたキヨタに、「裏」そいつは硬貨の面を指摘。


手を広げたキヨタはムッスリと顔を顰めて、「ビンゴッス」忌々しそうに鼻を鳴らした。