襲い掛かってくる輩を嗾(けしか)けながら、再度駅構内に戻った俺達は北口と書かれた出入り口を潜って、そのまま南口と書かれた出口に目指す。
わりと大きい駅だけど、バイクで北口から反対側の南口まで回ってくることは容易だろう。
そこまでの道路が用意されているのだから。
南口に出た俺達は、息をつく間もなく左右を確認。
「ケイ!」
タコ沢に主導権を託された俺は、一か八かの賭けで自動車やバイクの行き難い小道を選んで先頭を走る。
俺の選んだ小道は住宅街。
大通りと然程離れていないその通りを今しばらく駆けていた俺達だけど、体力的に限界を感じて徐々にスピードが落ちる。
一番最初にダウンしかけたのは体力的にも肉体的にも並な俺。
しょーがないじゃないか、俺はチャリ専なんだから。
根性のあるタコ沢や運動を習っていたキヨタとは体の作りが違うっつーの。
それでも音を上げないのは殆ど意地だ、意地。
三人でゼェハァと小道を駆け抜けていると、バイク音が聞こえてきた。
過剰反応する俺達は限界を無視して足を動かす。
もはや意地も意地だった。
川を跨ぐように架かっている高架橋に差し掛かると、タコ沢は何を思ったのかいい加減粘着質の高い追っ手にウンザリだとポツリ。
こうなったら身を隠すしかない、片側二車線の道路を一瞥した後、俺とキヨタの腕を引っ掴んで一時停止。
何をするんだと思った矢先、俺とキヨタは悲鳴を上げそうになった。
おい、嘘だろタコ沢!
そりゃお前、身を隠すも何もそれはあんまりぃぁああああ?!
―――パッシャーン。
程なくして、バイクの音が高架橋近くで止まった。
橋が邪魔してやり取りその他諸々は聞こえないものの、多分追って来た輩は別の場所を探そうと思ったんだろう。
再びエンジン音が聞こえて、そのまま去って行く。