提案に二つ返事で賛同してくれたから、揃って俺達はスーパーを出た。
チャリを取りに行きたいけれど、鍵を解除する余裕は無さそうだ。畜生、俺の尤も愛すべき武器が!
これじゃあ単なる役立たず田山、いや習字のできる田山なんだぜ!
さして喧嘩には役立ったことないんだぜ!
広場まで出ると、さっき俺達が撒いたバイク組が姿を探して徘徊していた。
ウゲーッ、このまま見つかったらやばいじゃねえかよ!
ああもう、後ろには俺達を愛してくれる追っ駆けさんっ、参ったね!
気付かれないよう逃げるには、というかバイク相手に逃げ切るに「ホワチョー!」
と、キヨタがブレーキを掛けて方向転換。
勢いよく俺に向かったと思ったら、頭上に向かって大きく蹴り上げてきた。反応する間もない。
反射的に目を閉じちまう俺だけど、「汚いっつーの!」キヨタは頭上で蹴り上げたそれを荒々しく掴み、自分の方に引いてそのまま一本背負い。
小さな体躯で私服のお兄さんを伸した。その現状を目の当たりにした俺は自分の身の危険を理解し、思わず身震い。
「き、キヨタ。サンキュ」
ほんっとキヨタが弟分でよかったっ! 心底そう思ってるよ、俺!
「肉体戦は任せて置いて下さいっス。それなりに慣れていますから! それよりタコ沢、バイク組に見つかると厄介だから追ってきている奴だけでも伸して撒こうぜ!」
小生意気な口調にタコ沢はキヨタにガンを飛ばしたけど、賛同はしたみたい。
「あんま逃げるのは」
趣味じゃねえんだぜゴァラア!
踵返したと思ったら、ド派手にストレートパンチを相手にかました。
顔面に拳を入れるところが鬼畜だけど、こっちも身を守ることでいっぱいだ。
タコ沢とキヨタが率先して相手を伸している中、俺はと言えば、足手纏いにならないよう必死こいて二人の背中を追う。
しかし駅は人の行き交いがある。
視界の悪い広場で誰かが派手に倒れたら、イヤでも注目が集まるということで?
お仕事帰りのオトナ達がこっちに視線を投げるように、俺達の姿を探していたバイク組が喧騒に気付いた。