いがみ合い、火花を散らし、怒鳴り合っている二人の間に割って入った俺は喧嘩を終わらせるためにタコ沢に敵の数を聞いた。

鼻息を荒くしているキャツは知らんの一言。

なんて無神経な台詞だと呆れたけど、よく話を聞いてみると少しばかり俺達と追われる事情が異なっているらしい。


俺達の場合はあからさま不良ですと分かるようなナリ、ダラけた制服と行動で判別が出来たけれど、タコ沢の場合は制服組と私服組分かれているんだとか。


たとえば通りを駆けている最中、ただの通行人かと思って横切ろうとする。

実はその通行人は楠本の手先で、油断しているとウッカリやられかねない。
 

さすがは奇襲ばかり掛けてくる軍団だといったところ。
 

徒歩のタコ沢に、奇襲攻撃を仕掛けようとしたんだろうな。

片やチャリの俺達相手にはカモフラージュなんて小細工はいらないと踏んだんだろう。


パッと見、俺やキヨタは身形で舐められたのかもしれないな。

タコ沢は目分からでもガタイも良いし、まんま筋肉質だから要注意人物と見定められたに違いない。

ぶっちゃけ言えば、俺達の中でいっちゃん強いのはキヨタなんだけどな。

チビな体躯こそカモフラージュとして役立っているのかもしれない。
 

俺は後ろを振り返る。
 

来てるきてるきてる、おっかない顔したいかにも不良さんと称すべき買い物客が!

タコ沢の話を聞いた手前、一般の買い物客にも追っ手が紛れていそうで怖い。

楠本繋がりってことは若人。それは分かるんだけど、不良ってのも分かっているんだけど。
 

中には本当にただの大学生、専門学校、フリーターの兄ちゃんって可能性もある。髪染めも余裕だろうし。

とにかくスーパーから出た方が無難だろう。

店内を走り回っている俺達は明らかに営業妨害者、下手すりゃ近場の交番に訴えられかねない。

見ろよ、周囲の白目。
気にしてないようで、チッラチラ見てくるんだけど、かんなり迷惑そう!