分かっているよ、キヨタ。

分かっているからこそお前には体力を温存して欲しい。


だってお前はチームの戦力の要だからな。
本番まで怪我とかは、なるべくさせたくないんだよ。
 

「ゴラァ、貴様等。悠々と休憩してるんじゃえねえぞ」


突然聞こえてきた声と、引かれる腕。

「走れ!」命令されて俺とキヨタはワケも分からず駆け出す。

指示を出したのは落ち合わせ場所を指定してきた仲間、呼吸を軽く上げながら背後を振り返っている。

「まだ追って来るか」

しつこいぜゴラァ、と舌打ちをしてくる某赤髪不良さま。


え゛、ちょ、お前まさか!


「た、タコ沢! お前、撒いて駅構内で落ち合おうって言ったよな! まだ追われているのかよ!」

「うっせぇ! こちたらぁ、駅周辺を根性で15分ぐれぇずっと走って…、誰がタコ沢だゴラァア!」


走りながら拳骨を飛ばしてくるタコ沢のせいで、俺の目からは星が飛び出た。

「イッテェ!」頭を押さえる俺の悲鳴に煩いとタコ沢は無慈悲なことをのたまった。

お前のせいだっつーの!
 

「あぁあああ! ケイさんに何するんだよ、タコ沢! 俺っちの兄貴なんだぞ、ちょっとは身を弁えろよ!」

「なあんでこの地味野郎に身を弁えないといけねぇんだごらあぁあ! こいつは俺の雪辱っ…て、誰がタコ沢だぁああ!」

「お前のことだよバァアカァアア! タコになっちまえぇえ!」

「ンだとやるのか! チビ助! 悪趣味にもこいつの弟分になるなんざ、見る目がねぇんじゃねえかゴラァ」


「アァアアア! ケイさんをバッカにしたな! しやがったなぁああ ターコ!」

「何度だって馬鹿にしてやるぜ、悪趣味のチービ!」


そしてお前等は喧嘩している最中に喧嘩を始めるしね!

やめなさい、二人とも、お買い物客にご迷惑が掛かるでしょうが!

ただでさえ、店内を走り回っている傍迷惑な客なのに!