素朴な疑問をニッコニコと聞いてくるキヨタに、俺は貼り付けた表情を作ってたっぷり間を置く。
んで勿論だと調子ノリは大袈裟に声を上げて、その手法を教えた。
ズバリ、待ち伏せ攻撃に打ってつけな戦法は強行突破でい!
「まったまたぁ。ケイさん、そんな強引な戦法で誤魔化しちゃって。本当はどうするんっスか?」
「まったまたぁ。キヨタさん、忘れちゃなんないぞ。俺はヨウの舎弟でもあるんだ。
ということは? 少しぐらい直球なところが似てもおかしくないってことで?」
「…うぇえ?! じゃ、じゃあ、もしもの時は」
「ビバ強行突破。ジミニャーノもレベルアップして捨て身タックルという名の突進技を覚えたわけだ。強行突破は意外とイケるんだぜ! 愛すべきブラザー!」
大丈夫、後ろにはお前が乗っているんだ。
敵は蹴散らしてくれるだろ?
なんて無茶振りに、キヨタが愛想笑いで生返事。
うん、ごめんキヨタ。
見事な苦笑だな。
無茶振りだったよな。
俺も自覚はしているよ、自覚は。
だけど無茶振りをこなさいと強い不良にはなれないんだぜ!
俺だってヨウの舎弟になって以下省略。
大通りに戻った俺達は、煌びやかなネオン街を見渡した。
懸念していた最悪の事態を免れたようだ。
そこに見えるのは人工的な光に満ち溢れた街と、仕事にくたびれた人間、気取った若人。路面には等間隔に列をなしている自動車。
撒いたわけではないけど、不意は突けたみたいだな。
この隙にさっさと移動することが最善の策。
俺はチャリをかっ飛ばして急いで駅に戻った。
警戒心を高めながら飲み屋の勧誘が多い広場を通り過ぎて、駅構内に入るためにチャリから下りるとそそくさ駐輪場にそれを置いて中に入る。
ろくにチェーンも掛けなかったけど、少しの間、愛チャリと離れるだけだ。大丈夫だろう。
時間帯的に名店街と称された服屋や雑貨屋、文具店は閉まっているけれど、24時間まで営業しているスーパーは開いていたから俺達はそこに逃げ込んだ。
疎らにいる買い物客を目にしながら、菓子売り場まで足を伸ばす。左右に人がいないことを確認した俺とキヨタはやっと撒けたのだと一息。
肩の力を抜いて、俺はキヨタになんとかなったな、と苦笑いを向けた。
「そうッスね」だけど喧嘩になったら負けなかったっスよ、キヨタは自分の右の腕を叩く。