「楠本っ、今回の主犯だそうだな」
「もう分かってることだろ? 調べはついてるんだろ? ははっ、そうだよ。今回の事件の発端は俺さ。ケリをつけようと思ってな」
「何がケリっ、奇襲バッカ掛けてきやがって」
「あっはっはっはっは! 復讐に奇襲も卑怯もクソもあるか!
サキさんの無念、俺の辛酸、たっぷり味わってもらうために、なんで正当な喧嘩を申し込まないといけねぇんだ? 綺麗事に反吐が出る、そういうところが甘っちょろいんだよ」
俺はな、蓮、終わりが欲しいんだよ。
お前と、お前等の終わりがな。
まあ、楽には終わらせないけどな!
んなのツマンネェもんな!
くつくつからヒィヒィ、大笑いしてくる楠本の殺伐とした殺気に俺は鳥肌が立っていた。
なんだなんだなんだこいつ。
ま、マジでやばいんじゃないか。
五十嵐並み恐怖を覚えるんだけど。
それとも、復讐心は人を鬼に変えちまうのか。
蓮さんの睨みをもろともしない楠本は、「なあに心配するな」今日は様子見に来ただけだと下唇を舐め上げた。
べつに喧嘩をしに来たわけでもない、いや味見をしに来たともいうけどな。
ふっと地を蹴る楠本は瞬く間に蓮さんの懐に入ると、
「お前だけは」
絶対に赦さない、この裏切り者、暴言と共に容赦ない拳が彼の鳩尾に入った。
少林寺拳法を習っていたとはいえ、不意打ちを食らっちまえば蓮さんも多大なダメージを受ける。
呼吸を忘れて、痛みに顔を顰める蓮さんの体が傾く。
すかさず楠本は制服のポケットから黒い何かを…、バチバチっ、ケタタマシイ音が流れるそれはスタンガンと呼ばれる代物だった。
押し当てられて悲鳴を上げる蓮さんの横っ腹を蹴り飛ばす楠本の手腕は相当なものだとみた。
「蓮さん!」
俺は痛む腹部を押さえながら、倒れた彼に駆け寄る。
ひゅうひゅうっと呼吸を繰り返す蓮さんは、「初めて感電した」痺れるってもんじゃねえな…超痛い、俺に冗談を言ってきた。