「また今度、ゆっくりお話させて下さい。5分10分で終わる話じゃないんで」


俺の申し出に、いつでも聞いてやるさ、蓮さんはあどけない顔で快諾してくれた。
持ち前の赤髪を掻き乱していつでも聞いてやるよ、繰り返してくれる。
 

礼を告げる俺だったけど、間を置いて率直に訊ねた。「気にしてるんですか?」と。
 
何に気にしているのか聞くまでもない。向こうも聞き返すまでもないだろう。
 
 
今回の事件は“エリア戦争”の延長戦。


蓮さんにとっては最大の黒歴史である事件が関与している。

仲間を人質に取られ、浅倉さん達を裏切って、榊原の配下に成り下がった。


でも本当は、その心だけはいつまでもいつまでも浅倉さん側にあって…、裏切ったせめてもの償いとして内部から榊原チームを取り崩した。蓮さんはその時の主犯だ。


俺はあの時、榊原チームが崩壊して、蓮さん達が浅倉さん達の下に戻ってハッピーエンドだって思っていた。思い込んでいた。

だって榊原が起こした事件が招いたチームの分裂だ。

そいつさえ終わっちまえば、何もかも終わりだって思っていたんだ。


実質、今日まで俺はそう思っていた。

でも何もかもがハッピーエンドってわけじゃなかった。
 

榊原チームの中には純に頭を慕っている奴もいたんだ。
現に楠本って不良みたいに廃人になり掛ける不良だっていたわけだし。

一側面でしか榊原を知らなかった俺だから、話を聞いても、あいつが不良の誰かに慕われていたなんて信じられなかったよ。

やり方がやり方だったんだし。


でも、その楠本って奴を筆頭に慕ってる不良もいたんだな。
 

だから今、こうして問題が発生している。


―――…蓮さんは今、何を想っているんだろう?