蓮さんはミネラルウォーターを買ったようだ。
透明なペットボトル容器に、透き通った液体が詰め込まれている。
日差しで煌びやかに反射しているミネラルウォーターを片手に、財布をズボンの尻ポケットに捻り込んだ蓮さんは振り返って微苦笑。
「見つかっちまったか」
なんとなくケイには気付かれそうな気がしたんだよな、目尻を下げてくる。
こういう抜け駆けは怒られますよ、蓮さんと肩を並べて脇を小突く。
ほんとにな、一笑を零す蓮さんは「ケイも共犯な」俺にペットボトルを差し出してくる。
受け取った俺はしょうがないから共犯になってあげますよっと、頬を崩し、ペットボトルを傾ける。
味のない液体が口内を潤した。
水なんて滅多な事じゃ飲まないな、わざわざ買って飲もうとも思わないし…、久しぶりに飲んだかんじ。
「ケイ、ピアスあけたんだな。イチャコラしていた彼女のためか?」
ぶくぶくっ、ペットボトルに気泡が発生。
どうにか噴出しに耐え切った俺は、「違いますよ」無理やり舎兄にあけられたのだと主張。
「制服は?」着崩してるなんて珍しいじゃん、悪戯っぽく笑う蓮さんに俺は仲間から着崩されたのだと顔を顰めた。
普段はこんなことしない、てか、これからもしない。
今日だけのスタイルだと肩を竦める。
やっぱ俺には着崩しなんてハイレベルな恰好、向いてないみたいだ。時間が経てば経つほど、違和感を感じる。
モトには怒られるだろうけど、明日からはまた真面目スタイルでいくよ。
ピアスだけはしゃーないけどさ。
「俺は今の方がイイと思うけどな。なんか、親近感に似たものを抱くっつーかさ。それがなくてもケイとは苦労って点で親近感だけどさ」
「舎兄に振り回されるって点ですね。分かります。俺、その舎兄の思いつきであけられましたもん、ピアス。―…まあ、俺のためにあけてくれたんですけどね」
「なんかあったのか?」「ちょっと」俺がへこんでいて、見かねた舎兄が動いてくれたのだと暴露。