「残念だがこれいった情報はねぇぜ。大抵小さな情報でも耳にするんだが…、あいつは故意的に情報を漏えいしねえよう、水面下に身を潜めていたにちげぇねぇ。探って収集してみねぇことには俺自身も何も言えねぇぜゴラァ。
謂うならば、計画性あり気の復讐だなこれは」
「うっし、分かった。んじゃ探れ、タコ沢。今すぐに。弥生と一緒に情報収集に行って来い」
「ッ、俺は谷沢だっ…、てか、来て早々それか! テメェはつっくづくいけ好かねぇな!」
吠えるタコ沢にヨウはニッと笑って、「パシリくんだもんな」君なら従順にやってくれるんだけどな、なー?
我がリーダーは笑顔で脅しを仕掛けた。
笑顔の裏ではこうキャツに言ってるだろう。
お前、俺に喧嘩を吹っ掛けたあの日のこと、忘れたとは言わせねぇぞ。
なんなら表に出てやるか?
痛い目には遭いたくないだろ? な? と。
……これでもヨウはタコ沢を仲間だと思ってるんだぞ。ほんと、だぞ。うん。
ちょっと扱い方が荒いだけで、いざとなったらタコ沢のために走る男…なんだぞ。うん。多分。
青筋を立てるタコ沢は握り拳を作りつつ、「イッテキマス」行きゃいいんだろうが畜生、腹立たしそうに返事していた。
ほんとにドンマイだな、タコ沢。
それでも俺、今お前のことを仲間だって思ってるからな!
こうした軽い打ち合わせをしている最中、俺はふっと話し合いの輪に蓮さんの姿がないことに気付いた。
周囲をグルッと見渡し、倉庫内にいないことを確認。
なんとなく蓮さんは外にいる気がして、俺は仲間に断りも入れず、差し足抜き足忍び足で外へと飛び出した。
たむろ場の敷地にもいない気がした俺は、路面に出て左右を交互に見やる。
んでもって向こうの自販機にいるような気がしたから、右の道を選んで駆ける。
勘は的中。
蓮さんは自販機前に立って飲み物を買っていた。俺達や仲間に断りも入れず、抜け駆けしているなんて…、蓮さんらしくない。
「蓮さん。何買ったんですか?」
声を掛けると同時に、ガタンゴトン。
自販機から飲み物が落ちた。