「榊原が行方を晦ましたのは俺等、いや俺に原因がある。
情けねぇ話だ、俺に力量がなかったばっかり榊原は反発の念を抱いて、チームの分裂。ようやく収拾できたと思っても、あいつを慕っていた仲間が復讐に燃えちまうなんざ」


「浅倉…」
 
 
「奴の最大の目的は復讐。次に『廃墟の住処』の強奪だ。復讐対象は俺等が中心になっているが…、あの時、事件に関わった協定を結んでいる荒川チームも眼中に入れられているにちげぇねぇ。
荒川、巻き込む形になって悪いが協力してくれねぇか?」

 
ヨウは三拍間を置いて、返事の代わりに疑念をぶつける。

「元チームメートと対峙できるのか?」と。
 
浅倉さんはヨウに似て仲間思いな部分がある。
だからこそヨウは聞くんだ。覚悟の上の対峙なのかと。


苦痛に満ちた一笑を浮かべる浅倉さんは「俺を慕う仲間もいる」精一杯の気持ちを漏らす。

自分を慕っている仲間が今傷付いているんだ。
蔑ろにできるわけないだろ。おりゃあチームのリーダーだ、今のチームメートを第一に考えなきゃなんねぇ。 


そうのたまう浅倉さんの想いを静聴したヨウは、「分かった」頷いて協力すると承諾した。


事件の一部は自分達も噛んでいるしな、クシャッと髪を乱した後、リーダーは近くにいた弥生に告げた。

「タコ沢を呼べ」

あいつは不良の内情に詳しい、俺達の存在を知っている楠本が元チームメート達だけで復讐するとは思えない。

あいつを呼んで手を組みそうな不良を洗い出すよう指示しろ、と弥生に指示。

すぐに行動を起こす弥生は携帯を片手に席を外した。
 

尻目に、ヨウは浅倉さんに失笑を零す。


「頭っつーのも楽じゃねえよな」

「ああ、まったくだ」

 
ただのチームメートになりてぇや、おどけ口調で苦笑する浅倉さんに、「ちげぇねぇ」ヨウは賛同してみせた。

リーダーも大変なんだな。
他人事のように思っていた俺は、ふっと視界の端に映った不良の様子に気付いて、そっちに視線を流す。

物思いに耽っているのは蓮さん。
話し合いに参加しているようで、立てた片膝に肘を置いて頬杖。遠目を作ってシケ込んでいる。


―…蓮さん。


切迫した蓮さんの表情がやけに瞼の裏に焼きついた。