あの“エリア戦争”の決着の在り方が不満だったんだろうな、完全な勝利を収めたって勝利じゃなかったからな。
 
物寂しそうに苦笑する浅倉さんは、「榊原は力を最優先する男だったが」一方でチームを想う奴でもあったと、軽く目を伏せる。

やり口は汚かったが、あいつなりはあいつなりのチームへの想いを抱いていた。

そんなあいつを慕う奴も少なからずいたわけだ。

自分の生ぬるいチームごっこの在り方に反発し榊原について行った不良達が、あの事件の敗北以降、少しずつ水面下で力を蓄えて表立つようになった。


奴等は復讐と自分達の支配している『廃墟の住処』の強奪を企てている。

 
「榊原を最も慕っていた男が主犯だってのは分かっている。
俺の元チームメートで榊原の舎弟だった男、名前は楠本 馨(くすもと かおる)。楠本は根っからの榊原ライクな男でな、あいつをよく慕っていた」


元々楠本は野良の不良で、どっかのチームに入れてもらってもすぐ追い出されちまう問題児だった。

そんな楠本を拾ったのは誰でもねぇ榊原。
持ち前の手腕を目に付け、荒みまくっていたあいつをチームに誘って舎弟として自分の下に置いてんだ。

それはそれは楠本を可愛がっていたみてぇなんだ。

度々チーム内で問題を起こすことがあっても榊原は楠本の肩を持ったし、必要以上にあいつを責めようともしなかった。

それで俺と何度か対峙したこともあったんだが、榊原は楠本を舎弟として置き続けた。
 

問題児だった楠本にとってはこれ以上にねぇ居場所だったに違いない。
 

今までチームを追い出されるのが当たり前だったあいつにとって、何があっても傍に置いてくれる榊原が心の拠り所だったんだろう。

何かあるとすぐ、「サキさん!」っつってあいつの下に駆けていたしな。

榊原が「サキじゃねえ。サカキバラだ。せめてサカキにしろ」っつっても、「サカキじゃ言い難いですもん」だからサキさんなんだって、勝手に愛称を作って慕っていた。


そりゃあもうライフもライクだった、ラブだっつったー方が適切かもしれねぇ。