話は戻して、浅倉チームは自分達の縄張りを荒らされて困っているそうだ。

いや、単に荒らしてくるだけなら自分達だけで事を片付けたに違いない。

浅倉チームが俺達に手を貸して欲しいと頼んできたのには理由がある。
  

「荒川、『エリア戦争』を憶えているか?」


声を窄める浅倉さんにヨウは間髪容れず頷く。


「あんな大規模な喧嘩、忘れるわけねぇだろうが。かなり後味の悪い勝利だったことも昨日のことのように憶えてる。
……、まさかテメェ等に奇襲を掛けてきてるのってっ。榊原(さかきばら)が復活したのか?」


榊原、それは元浅倉チームにいた不良の名前だ。

浅倉さんのチームの在り方・考え方が気に食わなくて、強行的に手腕のある仲間だけをすっぽ抜いて新チームを結成した主犯。


おかげで浅倉さんのチームには手腕のない不良達だけが集っちまって、一時は大ピンチを迎えてしまった。

それでも残ったチームメートのために浅倉さんは、ヨウと手を組んでもらおうとプライドも何もかも捨てて協定案を出してきたっけ。

直向きに仲間を想う姿勢がヨウの心を動かして協定同盟に至ったわけだけど。


まさか、あの主犯が復活したっていうのか?

一連の事件を聞く限り、可能性は大だ。

榊原は浅倉さんに私怨を抱いていたんだから。
 

「いや」浅倉さんはやんわりそれを否定した。
 

榊原が復活したわけじゃない。それは確認済みだ。

あいつはあの事件以来、行方を晦ませている。

自尊心を傷付けられて地元を離れたと考えるのが筋だろう。


浅倉さん自身、主犯であろうと元仲間のことは気に掛けていたみたい。

姿が見えないことに声音のトーンを落としていた。


じゃあ何故、“エリア戦争”を口にしたか。
答えは簡単、“エリア戦争”に関係していた奴等が主犯だったから。
 

「俺達に喧嘩を吹っ掛けてきているのは、俺達の元チームメートであり、元榊原チームだった不良達だ。
榊原チームの半分くれぇはこっちに俺の下に戻って来たが、半分は俺の下を去ったまま。そいつ等が力を蓄えて俺達に復讐しにきたんだ」