とはいえ、浅倉のチームは俺達荒川チームと手を結んでいる。


地元の不良で“荒川 庸一”の名前を知らない輩はそう少ない。

地元を支配下にしていたあの“五十嵐 竜也”を二度も破った不良のひとりだ。


地元の不良達は“荒川 庸一”同等の実力を持つ“日賀野 大和”を敵に回したくない筈。寧ろ味方にしたいチームに名が挙がると思う。


実際、ヨウの下に何チームか協定の申し出があった。


だけどヨウは今のところ、浅倉チームとしか手を結んでいない。

日賀野達と停戦協定は結んでるけど、まあ、結んでるだけで手の貸し借りは五十嵐の事件以降一度たりとも行われていないんだ。

 
あいつはリーダーとしてレベルが格段に上がっている。

並行してチームの見る目が養われていた。


一年前のヨウだったら、取り敢えず面白そうだからって理由だけでポンポン手を結んでいったと思うけど、今はチームに利害があるかどうかを真面目に考え、俺達チームメートの身に危険がありそうなチームは容赦なく申し出を切り捨てる。


反発があって喧嘩もちょいちょいあったけど、それでもヨウは容易にチーム協定を結ぶことはなかった。


いつか、ヨウが俺に教えてくれたことがある。

チームやチームメートは自分にとって最大の居場所、安息の居場所だと。
 

前々から仲間思いだったヨウは“五十嵐の一件”以来、誰よりもチームを大事に想うようになった。
人三倍仲間のために突っ走る男になったんだ。


成長を嬉しく思う反面、俺は懸念している。

あいつは元々“過ぎる”面がある。仲間への想いが三倍増しになったってことは、短所である“過ぎる”面も三倍増しになったってこと。
 

チームやチームメートに何かあった時、いっちゃん最初に崩れそうな気がするんだ。

表向きじゃリーダーって役目を担っているから、虚勢を張るだろうけど…、あいつも強くはない。

弱い面を知ってるからこそ、俺は密かに憂慮を抱いている。


あいつの“過ぎる”面に。