「―――…ワリィワリィ。気ィ利かせてそっとしておくんだったな。おりゃあ、そういうことに関しちゃ疎くてな。堪忍してくれ。荒川の舎弟。嬢ちゃん。
けど、こっちは単にあっまいイッチャイッチャをしてるんだなーって思っただけだぞ? それ以上のことは思っていないから安心してくれ。

なんなら、席を外して裏手で続きをしてくれても」


「浅倉…、こいつ等のやり取りが激甘なのは認めるが、それ以上ケイ達に何も言わないでやってくれ。こいつ等、そういう系の冗談は受け流しきれねぇんだ」

 
外出から戻って来たヨウのフォローのおかげで俺とココロは爆死せずに済んだらしい(でも余計な事を付け足された気がするけど!)。


だけど既に多大な羞恥は噛み締めちまってるもんだから、各々身を小さくして俺達は右端と左端に避難している。

からかわれないためにお互い、いっちゃん距離を置いている状況だ。こんなことしたら逆効果でからかいの的かもしれないけど、…しょ、しょうがないじゃないか。


今、一緒に肩を並べたら俺達、必要以上に意識しちまって話し合いどころじゃなくなるんだから。


初々しいとからかわれようがなんだろうが、俺達自身のために距離を置いておくのが一番だ。

余所では響子さんがこめかみに手を当てて溜息をついているけど(響子さん「二人を茶化したら恋愛模様がややこしくなるだろうが」)、知らんぷり。

とにもかくにもさっきのことを忘れようと俺は躍起になっていた。
ココロも同じ気持ちを抱いているに違いない。
 


悪い悪いと豪快に笑っている浅倉さんに吐息をついて、「んで?」どうしたんだ、リーダーが早速話題を切り出した。

副リーダーや舎弟達を連れて此処に来るなんて珍しいじゃないか。
まさか、お遊びで来たってこともないだろうし…、何か遭ったのか?

一変して真顔になるヨウにつられて、浅倉さんも真顔になって頷く。


向こうのリーダーは単刀直入に告げた、「手を貸して欲しい」と。


曰く、自分達の支配エリア『廃墟の住処』が荒らされ、仲間が奇襲を掛けられ、傷付いている日々を送っているとか。

奇襲なんて卑怯だな、真正面から挑んでくればいいのに。