それはさっき自省したばっかだ。

これでも、もうちょいココロを優先しないと。って思ったんだぞ、俺。
 

ジーッとココロに見つめられる。

いつまでも見つめられるもんだから、俺は頬を崩して軽く彼女の前髪を掻き分けるとそこに唇を落とした。

「むぅ」違うと唸る彼女に、分かっていたよと俺は悪戯っぽく笑う。


ココロは期待して見つめてきてたんだよな。


分かってるって、ちょっと意地悪したくなっただけなんだよ。

だって口でして欲しいって言わないからさ。


今度こそちゃんとしてやるために、俺は彼女の頭を撫でた後、そのまま「よっ。荒川の舎弟! いちゃついてるとこ悪いけど荒川いるか?」
 
 
………、何事?


ぎこちなく顔を上げて首を捻れば、金網フェンスの向こうに片手を挙げて気さくに話し掛けてくる不良一匹。背後に不良が三匹。
 

声を掛けてきたのは協定を結んでいる浅倉さんだ。

俺等の恋人空気を見事にぶち壊して、「荒川いるか?」と声を掛けてくる。


その後ろで彼の舎弟・蓮さんが必死に両手を合わせて謝罪していた。

邪魔してごめんと目で訴えてきている。


同じく彼の舎弟・桔平さんは「フツー空気読んで声掛けませんって」と浅倉さんにツッコミ。

「しかたがなか」九州弁を口にする涼さんはそれが我等がリーダーだと肩を竦めていた。



繰り返し、浅倉さんが「なあいるか?」と声を掛けてくる中、俺とココロはイチャイチャモードを解除し、顔面赤面。


まさか他者に、しかも複数にイチャモードを見られるなんて思ってもみなくって…。


俺達はカッチンコッチンに固まってしまったのだった。