わりかし鼻筋が通ってイケた顔をしている男子生徒は、ぺこぺこ謝罪しているココロを可笑しそうに笑い、行動を止めていた。
だけどその止め方にッ、俺、絶句のカチンコチン。
な、なして…、あの野郎は彼女の頭に手を置いて、馴れ馴れしくも撫でていやがるんですか?!
いや、待て落ち着け、向こうはスキンシップ好きの人間かもしれない。
下心があってココロの頭を撫でているとか、即疑念を抱くとか俺、論外! 嫉妬乙だぞ俺っ、…いやでもっ、普通に考えて女の子の頭を撫でるとかないだろっ!
それこそ論外だろ!
なんでココロも嫌がらないっ、うわぁあああまた問題発生かッ?!
も、俺の人生問題だらけじゃねえか畜生!
お先真っ暗、悩める人生なんだぜっ。
しかも向こうの方がカックイイからこれまた、盛大に嫉妬するんだよ!
へーんだっ、なんだいイケメンなんてっ、チッキショウのバカヤロウだーい!
凡人がいてこそ、イケメンは目立つんだからな!
俺等ジミニャーノに感謝しろよっ、俺等がいてこそお前等は輝けてるんだからな!
……へーんだっ、へーんだい! 負け惜しみだよバーカ!
機嫌が急降下していく中、二人が正門に向かって歩いて来た。
和気藹々とした会話が聞こえてくるけど、内容までは聞き取れない。
あーくそっ、不機嫌になるな。
余裕のない男は嫌われちまうぞ。
向こうはただの友達かもしれないだろ。
荒むんじゃないぞ。
自己暗示を掛けつつも、残念ガキんちょの俺は、ぶすくれてハンドルに肘を置き、頬杖をついていた。
笑声が鼓膜を振動する。なあに話してあんチクショウと笑ってるんだよ、ココロの奴。
「あっ! ケイさん!」
と、ここでようやく彼女が俺の存在に気付いたらしい。気付くの遅いんだけど、ココロさーん。
チラッと正門に流し目、そこにはちょこちょこっと俺の下に駆けて来るココロの姿。
それはそれは嬉しそうにはにかんできた。
これだけで、あ、もういっかな、とか思う現金な俺がいる。
だって拗ねてるより、彼女と楽しく会話した方がいいじゃんか。
他校同士なんだから一緒に過ごす時間は貴重だし。