「ケイさん、悩んでたの気付いて怒ってましたもん。あいつ、よくケイさん見てるっすから」

 
ちょっち寂しそうに笑うキヨタ。

俺はちょっと間を置いて「お前もな」ポンッと頭に手を置いて微笑してやる。


キョトン顔を作るキヨタは軽く俺と視線を合わせてきた。
弟分にお前もよく俺を見てくれてるだろ、助けられてる事が多いよ、言葉を手向ける。

途端に照れ笑いするキヨタは頬を掻いて、「そうっスかね」あどけない顔を作ってみせた。

「そうだよ」んでもって俺も意外と弟分を見てるんだからな、意味深に紡いで俺は“いつでも待っているから”と、キヨタの頭をクシャクシャに撫でた。

間の抜けた声を出すキヨタはどういう意味ですかっと、ぱちぱち瞬きをして俺に意味を教えて欲しいと纏わりついてくる。 

どういう意味ってそりゃあ、お前が抱えてる悩みを教えてくれることだよ…、その心を見せてくれることだよ…、とは言えない。

まだ俺自身も気持ちが固まっていないから、偉そうなことを言えないんだ。


ごめんな、キヨタ。
俺にヨウくらいの力量があれば、すぐにでも舎弟にしたんだけど、さ。
 

「ハジメの馬鹿―――ッ! トンチンカーン!」

「弥生にそのまま返すからっ、その台詞! この分からず屋女―――ッ!」

 
………、俺達は動きを止めてゆっくり首を捻る。

そこには倉庫の隅で延々口論をしているハジメと弥生の姿が。

まーたあいつ等喧嘩してるのかよ。相変わらずラブいねぇ、喧嘩はもはや愛の形だって思うよ俺は。

口論している二人にヤレヤレな気持ちを抱いていると、響子さんとシズが倉庫内に入って来た。


他校組も学校を終えたみたいだ(ちなみにヨウとワタルさんは煙草を買いに出掛けてるから不在中)。
 

欠伸を噛み締めているシズから、「ん?」ちょっとイケたな、と俺の服装を指摘。

しかもピアスあけてる、似合うじゃないかとお褒めのお言葉を頂いてしまった。

畜生、そんなこと言うなよ。
フツーに嬉しいじゃないか。

響子さんからも同じようにお褒めの…、って、あれ?