「舞子…?」


小さく、だけど確かにそう聞こえ、私は目を開き振り返った。そこに立っていたのは全てが真っ黒。目も髪も、雰囲気も漆黒に染まった男の子だった。目を丸くして私を見たあと、ズンズン!と足踏みが聞こえそうな歩みで此方に近付いてきた。


「舞子!?」
「ひっ!人違いです!」
「いいや!お前舞子だろ!舞子忘れたのか!俺だよ、黒伏 巽!」
「あ、の…私は千尋です…舞子は、私の母で、す…」
「…は?」


ちょっとイラッとしたような表情を浮かべ、彼は疑問形で問いかけながら私を見た。


「舞子に娘がいるなんて聞いたことねえ」
「でも、私」
「まさかお前あの高校行くんじゃないだろうな?」


そう言って指差す方向には九十九高校があった。まさかなとでも言うような口振りに私は初めて疑問を持った。何か、あの高校にあるのだろうか。