ふう、と息を一つ吐き、私は顔を上げた。綺麗な桜並木道の向こうには、私がこれから通うことになる『九十九高校』が見えた。九十九高校は家から電車で20分、徒歩で10分行ったところにあり、周りには住宅などは無い山の麓にそびえ建っている。

『お母さんも、此処に通ってたんだ…』


私がこの高校に決めた理由は他でもない、母“舞子”の出身校だったからである。それ以外に理由はなかった。



母、舞子は地元で有名な“神之園神社”の巫女で、父が亡くなった後も繁栄し続けていた。しかしある日、舞子は帰らぬ人となった。理由も未だに分かってはいない。目立つ外傷もなければ、薬なども服用した形跡がないという。それからと言うもの、まだ小さい私が神社を継げるわけもなく、私の家の神社は寂れてしまったのだった。



「友達出来たらいいな…っ」


次の瞬間、ぶわっと強い風が吹いて桜吹雪が舞い、私は目を瞑った。母から綺麗ね、といつも誉められていた長い黒髪がなびく。