「そのままでいて」

圭吾さんは車を停めて降りると、車をぐるっと助手席側に回って来てドアを開けた。

「ようこそ、清流学院へ」

差し出された手を思わず取る。

「ここの理事長も僕等の親戚だよ」


へっ? うそ 聞いてない


「でも、羽竜家側の人ですよね?」

「うん、そう。でもうちにいる間は君も羽竜家の者だよ。周りはそう見るし、そういう扱いをすると思うから」


めまいしそう


「あの……今さらなんですけど、圭吾さんちって殿様かなんかですか?」

「殿様ではないけれど、この辺の地主だったみたいだね」


うわぁ~ん 勘弁してよ


「やっちゃいけない事とかあるのかなぁ?」

「旧家なんてやっちゃいけない事だらけだよ。いちいち気にしなくてもいい」

圭吾さんはわたしの制服の乱れを直しながら微笑んだ。

「志鶴は志鶴のままで、何か言われても無視しておいで。君がどんなヘマをしようと母も
彩名も僕も気にしない」

「わたしがヘマするの前提ですか?」

「前提だよ」


だよねぇ


「用意はいいかい、従妹くん? 校長室にご案内しよう」

「校長先生も親戚だったりする?」

「従兄だ」


はぁ~っ