月明かりの中、岩の上を流れる水の音の他は物音ひとつしない。
静寂で平穏
世界中で自分が一人ぼっちだという気分になる景色だ。
濡れた草の上を歩きながら考え続けた
圭吾さんのどこが問題なのかという彩名さんの問いかけを
『誰のものでもないのなら僕のものにしてしまって何が悪い?』という圭吾さんの言葉を
本当は分かってる
圭吾さんを『お兄さん』に分類してしまう方がわたしにとっては楽なんだ。
ただいるだけで可愛がってもらえるから
優月さんと比べられる事がないから
わたしは卑怯?
でも怖いもの
大切な人はいつもわたしを置いていく
圭吾さんに心を明け渡して、置き去りにされたらどうしたらいいの?
その時
闇の向こうからわたしの名を呼ぶ圭吾さんの声が聞こえた。