日は沈んだものの、夏至の夜空はまだ明るかった。
「露店が出てるから行ってみる?」
圭吾さんがそう言った。
お祭りの縁日なんて何年ぶりだろう。
中学生の間は一度も行かなかったのは確か。
そう言うと圭吾さんは驚いたような顔をして、『友達と行かなかったの?』ときいた。
「うん、なんとなくね」
「僕もしばらく露店めぐりはしてないよ。二人とも久しぶりってことだね」
手をつなぎ、わたし達は人込みの中に繰り出した。
わた飴ほしい
チョコバナナ、おいしそう
圭吾さん ねえ、あれ何?
「志鶴、お腹こわすよ」
圭吾さんがおかしそうに注意する。
「お腹こわしてもいい」
そして圭吾さんや彩名さんに心配してもらうの
「金魚すくいは?」
「連れて帰って死んでしまったら嫌」
「じゃあ死なない金魚を取ろう」
圭吾さんは射的の棚の変な金魚のぬいぐるみを指差した。
笑いころげて
圭吾さんの腕にしがみついて
楽しい
とっても楽しい
「そんなに気に入ったなら、また一緒に来よう。お盆にも花火大会があって露店が出るから」
圭吾さんは金魚のぬいぐるみをくれてそう言った。