目が回る 目が回る
いきなりひどいよ、圭吾さん
涙目で文句を言うと、圭吾さんは『ごめんごめん』って言ったけど声が笑ってる。
圭吾さんのバカ
でも、もう怒ってないみたいだからいいや
「ここどこ?」
「神社の裏参道だよ」
鳥居が一つ海に向かって立っている。
鳥居の近くに人が集まっていた。
鳥居の向こうは崖だ。参道って道があるものじゃないの??
「道はこれからできるんだ。ほら海から突き出ている大きな岩が二つあるだろ? あれを見ていて」
ゆっくりと海を染め上げながら太陽が沈もうとしている。
まだ足がふらつくわたしは圭吾さんにもたれかかるようにして海を見ていた。
日が海に沈むその瞬間――
あっ!
太陽が二つの岩の間に沈む。
そこから鳥居を通り神社の社殿へと、光が道のように真っすぐとつながった。
そしてバタバタとものすごい音がして、
龍が 龍たちが
いっせいに海に向かって飛んでいく。
「圭吾さん、あれ!」
「うん、竜宮の門が開いて龍神が社に降りたんだ。そして龍たちは竜宮に帰るんだよ――まあ実際のところはあいつらの繁殖期で崖に向かうだけなんだけどね」
「そうなの? でも、キラキラ綺麗」
龍たちの翼が夕陽をはじいて光っている。
「本当、綺麗だ」
圭吾さんの声が耳元で聞こえ、左側の頬に何かが触れた。
えっ? 何?
わたし頬にキスされてる?
さっき、ケガをしてると指でなぞられたところに、圭吾さんの唇が触れている。
ほんの一瞬で
そっと触れるだけのキスだったのに
心臓が止まりそう
慌てて、体ごと振り向いて圭吾さんの胸に顔をうずめた。
圭吾さんはわたしの髪をなでながら何かつぶやいた。
『前途多難だな』って聞こえたけど
何のこと?