合図の太鼓が鳴ると、会場はどよめきに包まれた。
龍たちが一斉に飛び立つ。
最初に掲げられた三枚の扇を鼻先で落とし、急上昇。
壁を飛び越え、今度は急降下。
池に浮かべられた球をくわえて取り、池の向こうの竹カゴの上を通り抜ける瞬間に中に落とす。
再び壁を飛び越え、次の壁は下をくぐり抜ける。
壁は繰り返し三枚。
壁と壁の距離は微妙に違う。タイミングを笛の音で教えるのは龍師の務めだ。
途中で龍と龍がぶつかり合う。
躯体の小さいものははね飛ばされて水をあけられる。
ぶつかりどころが悪いと、羽が傷ついて落下――龍師が助けに行って棄権扱いとなる。
壁の障害が終わると、次は等間隔で立てられた旗のポールの間をスラローム。
「大ちゃんの龍は先頭の赤龍なの」
見れば、赤龍と黄龍が先頭を争っている。そのすぐ後ろをもう一頭黄龍が追いかける。
旗の林が終わると再び降下、曲がりくねったトンネルを龍は飛ぶ。
翼を側壁にぶつけやすい一番の難所だ。
そしてトンネルを抜け、最後はひたすら長い長い直線の距離を飛ぶ。
「行けーっ! 大輔ーっ!」
美月が草むらに突っこんでいきそうな勢いで声援を送った。
「行けーっ! 大輔ーっ!」
こぶしを握り締めて見ていたわたしも思わず叫ぶ。
会場のあちらこちらからそれぞれに声援がとんでいる。
抜きつ抜かれつ龍は飛び続け
最後に
最後にゴールの大扇を落とした者が勝者となる。
赤?
それとも 黄?
龍の絵の描かれた青銀の大扇が落ちた。
「ぃやったぁ―――っ!!」
美月の歓声が鼓膜を痛いほど震わせたが、わたしは美月と抱き合ってとび跳ねた。