竜田川美月の妄想の爆走を止めてくれたのは、『子供の部始まります』というアナウンスだった。

「行かなきゃ! 三田先輩、早く早く!」

「私たち『子供の部』なの?」

「何言ってるんですか。違いますよ。見に行くんですってば!」


無理やり手をひっぱられ、仮設テントの裏に連れて行かれた。

先客が何人かいる。

どうやら木立の陰から闘龍場が見られる場所らしい。


「中学生以下は『子供の部』なんです。わたし、去年まで三年連続優勝だったんですよ」


そいつはすごい


「で、今年の優勝候補は中三の羽竜大輔。わたしの幼なじみで闘龍のライバル」

「また羽竜なの?」


勘弁してよ。親戚軍団。

いささかげんなりしてそう言ったが、美月は全く気付かない。


「そうですよ。校長の一番下の弟ですから、先輩とは義理の従弟ですね!」

「ねえ、聞くの怖いんだけど校長って何人兄弟?」

「男ばかり5人です」


すごっ!

ウルトラ兄弟より少ないだけまだましか



美月の説明によると、子供用の闘龍は障害の種類は大人と変わらないが距離が短いのだという。

龍たちは、まだ小柄な男の子や男の子より背の高い女の子の左腕にちゃんと留まっていたが、赤と白と黄色の龍ばかりだ。


「青龍――といっても緑なんですけどね――は気性が穏やか過ぎて闘龍には向かないんです。黒は躯体が大きくなりすぎるので大人の男性じゃないと制御できません。で、一般的にあの三種が使われるんです」

「竜田川さん、さすがに詳しいのね」

「お姉ちゃんにできなくて、わたしが得意なものって闘龍だけなんです。あっ誤解しないでくださいね。お姉ちゃんは大好きですよ。でも、やっぱり全敗となるとキツイじゃないですか」


あんたはお姉さん似の美貌があるだけまだましよ。

わたしのいいところって何だろう?

あの優月さんの後にわたしと結婚しようって圭吾さんの気が知れないなぁ