散々わたしの世話を焼き、後で迎えに来るからと言い残して圭吾さんはやっと控所を出て行った。
「すっごい猫可愛がりね」
何よ~ 竜田川美月。またケンカを売る気?
「嫌にならない?」
「ちょっと気まずい時はあるわね。でも、わたし一人っ子だからお兄さんができて嬉しいって気持ちの方が強いかな」
「え、え――――――っ?!」
「な……何よ」
竜田川美月は突進して来た。
「あなた圭吾さんの何?」
「……従妹だけど?」
「親が決めた婚約者じゃないの?」
何だ、その韓流ドラマ設定。
「ええと、確かに結婚って話は出てるけど……婚約はしてないよ?」
「じゃ、お姉ちゃんはどうして圭吾さんと別れたの?」
知らないわよ~
「わたしのせいじゃない事は確かよ。ここに来るまで圭吾さんに会った事ないもの」
「信じらんない」
竜田川美月はわたしの横にドサッと座った。
信じらんないのはこっちだけど
「彩名さんは、圭吾さんが家の仕事で忙しくなって自然消滅したように言ってたよ」
「あの二人、すごく仲よかったんだよ」
「結婚決めるくらいだもの、校長の方がいいって事じゃないの?」
「圭吾さんの方がいいよぉ」
それはあんたの意見でしょうが!
「で、噂を信じてわたしが婚約者だと思ったんだ」
「うん。本当に従妹なの? この辺で見たことない気がするんだけど」
「母親同士が姉妹。うちの親、駆け落ち婚だから親戚とは疎遠だったのよね」
「分かった! あなたと結婚すると見せかけて、お姉ちゃんにヤキモチ妬かせて『やっぱり圭吾が好き』って気づかせる作戦なのよ!」
妄想はそこまでにしておけって!