「見ている方は面白いけどね」
圭吾さんはクスクス笑って言うと、龍のケージを所定の場所に置いた。
つないでいた手が離れ、思いがけず不安な気持ちになる。
「そういえば結婚式の日取り決まったんだって?」
「え、ええ……十月に」
「おめでとう」
「ありがとう……」優月さんはちょっとためらってから言葉を続けた。
「司さんと仲直りしてくれたんでしょう? その事も感謝してるわ」
司さんって校長?
ええええーっ! 優月さんの相手って校長だったのぉ??
「で、その司は?」
「実行委員席にいるわ。わたしもそろそろ行かなきゃ。圭吾も行く?」
「さっさと行ってよ」美月が口を挟んだ。「わたしは誰かさんと違って保護者なんて必要じゃないから」
うわー イヤミったらしい
「失礼ね! わたしだって――」
言いかけたわたしの口を圭吾さんの手がふさいだ。
「志鶴には僕が必要だよ――悪いけどこの娘の支度をしてから行くから、お先にどうぞ」
立ち去る優月さんを見送ると、圭吾さんは体を屈めてわたしの耳元にささやいた。
「そして僕には志鶴が必要だ」