境内の奥にイベント用の大きな仮設テントが三張りあって、『龍師控所』と書かれた看板が立っていた。

受付で名前を書いて中に入ると、誰かが『圭吾』と呼ぶ。

圭吾さんは振り返って声をかけた人を見た。

オフホワイトの細身のスーツを着た綺麗な女の人が、まるで祈りを捧げるように胸の前で指を組んで手を合わせていた。

圭吾さんは一瞬わたしの手をギュッと握りしめて、

「やあ優月、久しぶり」

と、落ち着いた声で言う。


この人が優月さん?

驚くほどの美人。

彩名さんのようなふんわりとした優しい美しさではなく、冴え渡るような、すれ違った人が全員振り向くような美しさだ。

こんな綺麗な人と圭吾さんは付き合っていたのか

そりゃ別れたら落ち込むわ

っていうか、こんな美人の後でなぜわたしみたいなのを選ぶ訳?


「あーら、三田先輩。今日も保護者同伴ですかぁ?」

間延びしたイヤミな言い方
――げっ! 竜田川美月!

「あんただって同伴じゃないの」

言い返すと

「うちは姉です」

「わたしだって圭吾さんは親じゃないわよっ!」


言い合っていると圭吾さんがポツリと

「なんだ意外と仲がいいんだな」と言った。


「よくないっ!」

わっ! 美月とハモった


「美月ちゃん、人前でやめてちょうだい」

優月さんが困ったように言った。