少ししてアイスクリームショップに現れた圭吾さんはチャコールグレーのスーツ姿。
お仕事で出かけた先から来たみたい。
「やあ、お嬢さま達、こんなところでパーティーだったんだね」
圭吾さんがそう言ってわたし達のところへ来た。
「まだ入るようなら、もう一個おごらせてもらうけど?」
「入ります! 全然だいじょうぶ!」
あんた達――今トリプルアイスやっつけたばかりでしょうが!
まだダブルいけるの?
「志鶴は?」
「え……じゃあクレープで」
ダメじゃん わたし
わたしたちが再びアイスにかぶりついている間に、圭吾さんはお店の人と何やら話し、店の奥へと入って行った。
「線引いちゃうんだ、うん……きっと」
と、チョコミントアイスをなめながら美幸が言う。
「圭吾さんが引くものなの?」
いまだに何の事か分からないけど、一応きいてみる。
「圭吾さんっていうより『羽竜の当主』がやるお仕事だよ。龍神様の子孫だから。
正式には線のこと何て言うんだっけ?」
「うちの親は、龍線とか龍道って呼んでるけど」
と、亜由美。こっちはストロベリーを食べ終えたところ。
「ああそれだ。龍神様の通り道だって言い伝えなのよ」
「みんなはそれ信じてるわけ?」
「だってね」
みんなは笑いながら子供の頃の話しをした。
悪いことをしてもすぐバレてしまった事。
山の中で迷子になって見つけられた事。
一人で遊んでいて池で溺れかけた子が助け出された事。
『線』に囲まれた場所でなら龍神様の目に留まるのだという。
「よその土地から来た人にとっては迷信なんだろうけどね」
いつの間にか戻ってきた圭吾さんが、わたしの後ろから肩に両手を置いた。
「用事終わりました?」
「うん。みんなの用事も終わったようだね。全員車で送るよ」
友達が歓声をあげた。
全員は乗れないんじゃないの?
と思ったら、駐車場には七人乗りのボックスカー。
龍神様にはお見通し?
「さっきの電話で滝田さんとこの娘にきいたんだよ」
圭吾さんがわたしの耳元でささやいて、ウィンクした。