「ない! ホントないから! 圭吾さんはお兄さんみたいなもんだってば」
慌てて否定しているところに携帯着信。
「ああ、その圭吾さんだ」
みんな笑いながら『出なよ』と言う。
もう!
「志鶴です」
――志鶴? 今どこ?
「学校の近くのアイスクリーム屋さん。何かありました?」
――いや、いいんだ。ラインの上に見当たらないから、ちょっと焦った
「ラインって?」
「ここできたばかりだから『線』から外れてるのよ」
横から美幸が言う。
――今の誰?
「滝田美幸。友達です」
――ああ分かった。ちょっと代わってくれる?
「美幸と話したいって」
「えっマジ? うわぁ 緊張する」
思いっきりよそいきの声で電話に出た美幸は、何かの線について話してる。
『西の青の線』とか『南の赤』っていったい何?
「ええ、そうです。分かりました。どういたしまして――志鶴、はい」
戻された電話に出ると、迎えに行くからここで待ってるように言われた。
「ねえ、『線』って何?」
わたしがきくと、みんながまちまちな答えを言った。
地図の緯度経度みたいなもの
道路地図のようなもの
ネットワークみたいなもの
センサーみたいなもの
「美幸は見えるのよね」と亜由美が言う。「わたしは全然だけど」
「見えてもそれほどメリットないわよ。強い人だと移動できるってきいてる。おばあちゃんはそうだったみたい」
「ねえ、わたしには何がなんだか」
みんなはまた顔を見合わせた。
もう! 残念な人みたいに見ないでよっ!