連れて行かれた先は圭吾さんの住む3階。
私と彩名さんの部屋の前の廊下の突き当たりにドアがあって、そこから上の階に向かって細く急な階段が続いている。
階段の途中の壁には窓がなく、代わりに小さな明かりが手すり沿いに等間隔で並んでいる。
階段を上がりきってまたドアを開けると、そこは眩しいほどの日差しが差し込む広い部屋。
圭吾さんの横を突っ切って、黒い龍が開けっ放しの大きな窓から外に飛んで行った。
「おいで」
圭吾さんに手を引っ張られ、龍の後を追って窓からテラスに出る。
「志鶴、下をご覧」
テラスのフェンスに手をかけて下をのぞきこむと
うわぁ!
そこはレンガの高い壁と岩山に囲まれた緑の庭。
色とりどりの花々が気ままに咲き乱れ、岩山からは細い水の流れが幾筋も滝になって流れ落ちていた。
木と花の間を縫うように龍たちが低く滑空していて、翼が日差しをはじいて光る。
「圭吾さん! 圭吾さん! ねぇ、下に下りられないの?」
「あっちに階段があるよ」
3階のテラスから下の庭園まで長い螺旋階段が続いていた。
手すりにつかまりながら駆け降りる。
すごい
すごい
目の前で龍が宙返りする。
息を切らして、最後の2、3段をすっ飛ばして地面に飛び降りると、草の間から小さな龍達が昆虫のように飛び出して行った。
「ねぇーっ! ここは何ぃっ?」
高い空を見上げながらきく。
「龍の棲息地ってとこかな」
すぐ後ろで圭吾さんの声がした。
「岩山の方に洞窟があるんだ。そこであいつらは産卵して孵化する」
「こうやって見ると、本物の龍みたい」
「だって本物だもの」
「トカゲの一種でしょ?」
「こんなトカゲ、どの図鑑にも載ってないよ」