「下級生で竜田川美月(たつたがわ みつき)って子」
1年A組のその子は人目を引く美少女で、いつも大勢の友達に囲まれている。
どういうわけか最初っからわたしに敵意むき出しで、会うたびに聞こえよがしにイヤミな事をチクチクと言ってくる。
「ああ、あの娘か」
「従妹だって言うんじゃないでしょうね」
「遠縁だよ。縁戚っていうとこかな」
またか。親戚じゃない人ってこの町にいるのかしら
「その子が闘龍の話をしてきて、あんまりにも当てこすりみたいな事を言うから頭にきちゃったの」
「それで闘龍をやろうと思ったのか」
「ええと……そうじゃなくてね」
「そうじゃない?」
「売り言葉に買い言葉で、闘龍くらいできるって、自分の龍くらい持ってるって言っちゃった」
圭吾さんは呆気にとられたような顔をした。
そうだよね、自分でも馬鹿だと思うもの
「そう言ったのか? 闘龍がどんなものか知らないのに?」
「そう」
「闘龍用の龍を見た事もないのに?」
「うん」
一瞬の沈黙の後
圭吾さんはゲラゲラと笑い出した。
そんなに笑う事ぁないでしょ
ココアを持ってきてくれた和子さんが『まあ』と呟いた。
「君にはちょっと無理だと思うよ」
笑いながら言う圭吾さんの言葉にムッとした。
「頭から決めつけなくてもいいでしょう? だいたい『龍』って何ですか?」
「文字通り龍だよ。ドラゴンさ」
へっ?
「ほら――」
圭吾さんが軽く手を上げると、バサバサッという羽音がした。
伯母さまと和子さんが小さく悲鳴をあげる。