私はクスッと微笑を零した。


「どうしたんだ?」


『なんでもないよ♪』


姫華はニコッと笑みを向け、また歩きだした。




「お前、家どこ?」


咲人が優哉に問い掛けた。


「俺はF町2番地。」


「じゃあ、そこの角でさよならか。」


咲人は後ちょっとで着く分かれ道を指差した。


「姫華の家まで行くよ。」


「俺がついてるからいいって。」


咲人は優哉の言葉に遠慮がちに見せて牽制した。


咲人は気付いていた。


姫華の右手がチラついた時に見えた、繋がれた手。


咲人の顔がわずかに歪む。


「でも少しでも姫華といたいから。」


その言葉に姫華が顔を赤くした。


同じくその言葉に咲人の眉がピクッと動いた。


「俺は姫の幼なじみだし、丁度姫ん家に用事あったし。」


咲人は頭の中で一生懸命言い訳を並べながら姫華の手を掴んだ。