「蓮さん。今日は、わざわざすみませんでした」



玄関先で私は頭を下げた。


わざわざ私なんかのために総長自らの足で来るなんて……。



「……」


「あの、出来るだけ邪魔にならないようにするんで、明日は宜しくお願いします」


「……ねーよ」


「え?」


「邪魔なんかじゃねー」


「……」



虎さん、何でこんなにも逞さんと似てないんだろう。


優しいところとか、笑った顔は確かに似てるかもだけど。


てか、直接笑いかけられたことあるか私?



「お前、あいつらの前と愁の前じゃ顔が違うな」


「……」


「否定しねーのか?」


「……しません」



否定なんかできない。だって本当のことだから。



「お前が千夏を嫌うのは勝手だ」



知ってたんだ。幸大くんチクったな。



「だが……」



恭二は言わないだろーし。なんとなく幸大くんの気がする。



「あいつを傷付けたら許さねぇ」


「はい、肝に銘じておきます」



大丈夫。


私は上手くやれるから。


私は上手くやれる。


あの子を傷付ける?


なんで私がそんな面倒なことしなきゃいけないの?


馬鹿みたい。


私は知らなかった。


よく分かっていたはずなのに。