「てか、無理だから」


「何でよー」



ほのか、だだこねないで。相手するのも疲れてきた。こーゆーのが一番面倒。



「もしかしてデート?」



そう言ったのは幸大くん。たぶん冗談で言ったんだと思う。でも、私の体は大袈裟なほど反応してしまった。



「え、まじ?」



幸大が、しまったって顔を引きつらせたが、もう遅い。



「は?誰とだよ」



豹変した恭二の顔は怖い。低い声も目もオーラも全部怖い。



「おい」



肩を掴まれる。



「まーまー、落ち着け恭二」



幸大くんが苦笑しながら宥めようとしても恭二は止まらない。



「誰だって聞いてんだよ!」



声を荒げた瞬間、私の体はあの時を思いだし反射的に腕で顔を覆っていた。



「恭二!」



千夏ちゃんの声でハッとしたように我に返った恭二は動揺していた。



「……ないで」



私はペンダントを、堅く握り締める。



「殴らないで!」



私の叫び声が、いつの間にか静まり返っていた教室に響き渡った。