ぼくは待っていた。
おばあちゃんがすやすや寝てしまうのを。

そして、家を出た。

いっぱい走った。
いっぱいいっぱい走った。

『朝までに帰らなきゃ』

大好きなおばあちゃんの、あのしわしわの笑顔が見たかった。

ずっと走ったその先に木はあった。

広い公園の真ん中に木はあった。

大きな大きな木の下には葉っぱがいっぱい落ちていた。

ぼくは本の中にあった葉っぱと同じ葉っぱを、1枚持って帰った。

『あっ』

気付いたときには、ぼくの周りが明るくなってきていた。

『急がなきゃ』

ぼくはまた、いっぱい走った。

ようやくおばあちゃんの家が見えたとき、玄関におばあちゃんが立っているのも見えた。

もう、お日様はぼくの頭の上にあった。

おばあちゃんは、「わんちゃん、わんちゃん」と何度も呼んでいた。

ぼくは走った。

おばあちゃんは、ぼくに気付いてゆっくり歩いて迎えに来てくれた。

心配そうな目。

「わんちゃん、どこに行ってたの?」

ぼくを優しく抱っこして、家の中に入る。

「わんちゃん、これ…」

ぼくは葉っぱをおばあちゃんに見せた。