どれだけ時間が経ったか知らないけれど
突然、目の前に白い空間が出来た。


周りは薄暗かったけど、
そこだけは光ってて、
先が見えなくて。



「いきなよ」


そっちを見ていると、彼が言った。


多分、戻れるんだ。

なんとなくそう思った。


だけど彼の方をもう1度振り返ったら、

もう、前を向く事は出来なかった。





気がついたら、光は消えていた。




【選択027・終】




目が覚めると、
いつもとは違う場所で、
いつもの奴が、足元じゃなくて

……頭の横に突っ立っていた。



ここはどこだ?

そんな事を思う前に、
目の前に現れた、靄のかかった光の中。

根拠は無いけど、
そこから逃げれる!

そう思った俺は、
目の前の男から逃げたくて
すぐさまそこへ飛び込んだ。


いや、だって怖いじゃん!


なんかここ普通じゃないっぽいし。

相手の独擅場だったら超困るし。

とにかく急いで逃げたんだ。




そしたら、
なんか学校だった。

そういえば、百物語してたんだっけ。


思い出して、
周りに居た奴と一緒に教室を出た。

警備員さんと出くわして、
なんか色々聞かれて、警察とか来ちゃって。


なんでそんな大騒ぎしてんの?

そう訊いたら、
なんか数日経ってたらしい。


そりゃ騒ぎにもなるわな。




一段落して、
家に帰って、寝た。


なんかよく解んないけど、
無性に疲れていたらしい。


数時間経った頃に、
俺はいつものように金縛りで目が覚めた。


足元には、やっぱり奴が居た。



……そういえば、数日間。
まさかずっとコイツと居たのか?


嫌な想像を巡らせていると、
何故だか頭に声が響いてきた。


『やっぱ生きてる人間じゃないと
つまらないだろ』


……変態だ!

とにかく俺はそう思って、
気合いで金縛りを解こうと必死になった。

このままじゃ何されるか解らないし!


そうしている内に、足が動かせたんだ。

いい感じに相手の顔にあたって、
『痛っ!』みたいな顔して、奴は消えた。


へー、幽霊って蹴れるんだ?

俺はそう思って、
今度から追い払おうと決めた。



だけど次からは、奴もなんか
技とかかけてきて対抗してくるもんだから
俺は空手部とか柔道部とか
プロレス、ボクシング、キックボクシング同好会に仮入部をしまくる事になるとは

その時の俺は、知る由も無かった。



【選択023・終】




さっきまで、学校にいたはずなのに。


辺りにはテレビがたくさんあって、
どこか知らない家みたいな場所にいた。


「あれ、お前もあの女に殺されたの?」

一緒に呪いのビデオを見た友達が
1つのテレビの前に座っていた。


「何?ここ、死後の世界?」

「多分そうなんじゃね?」


軽い調子でそう言われて、
なんとなく俺も納得した。

呪われたんだし、しょうがないか。


そして俺も、
彼の見てる画面に視線を移した。




別に熱中しているという訳でもなく、
なんとなく眺めていると言った風なその画面。

恐々とこちらを見る、
知らない誰かの姿が映っていた。


「このテレビはさ、俺たちみたいに
呪いのビデオを見てる奴が見えるみたい」

そう説明されると、
確かにあの日の俺たちのような表情だ。


「で、これ見て何してんの?」

「いや別に、なんもしないよ。
他の番組も見れるしね」

そう言いながら、
どこからかリモコンを取り出し、
テレビに向けてボタンを押した。


すると、
見覚えのあるタレントが映った。

普通の番組も見れるらしい。




ピッピとチャンネルを回しながら、
再び誰かの姿が映し出された画面に。


友達はそこで手を止め、
ニヤリと笑って言った。

「実はさ、これ、覗けるんだ」

今も、覗いていると言えるだろうに、
よくわからない事を言う奴だ。


彼は手を、画面の前へと突き出した。

そしてそのまま、向こうの誰かへと伸ばす


すると手は、画面の中に吸い込まれるように消えてしまった。


代わりに、
映し出される向こうには、
手首から先の存在が増えていた。


「遊べるし、まあ暇はしないよ」

手を引き抜いて、彼は言う。


「……そういやさ」

突然疑問が湧いて、俺は彼に尋ねた。


「お前、死んでるよな?」

「うん、今さらだけど」


「死んだ奴に、死因聞かされるって
俺、心霊体験してた訳?」


死んだはずなのに、
この友人は俺の前に現れて、
女に殺されたと言っていた。

普通に考えると、おかしい。




「それ、今更過ぎるだろ!」

彼は笑い始めた。


多分きっと、
あの時もテレビを通して来たんだろう。

呪いのビデオは、見てなかったけど。

そういうチャンネルもあるんだろうな。

勝手に納得して、
俺はチャンネルを回し始めた。


色々、映っている。


俺の通っている学校が
ニュース番組に登場していた。

見ていると、どうやら俺を含めた参加者が
みんな行方不明らしい。


「今ここから顔出したらどうなるかな?」

「普通に不気味だから、やめとけよ?」

ホラー番組を作り出そうとしたら、止められた。


確かに、いきなりお茶の間に登場は駄目か。


俺たちはまた、チャンネルを回し始めた。


死んだんなら、
開き直ってそれなりに楽しもう。

そう思った。



【選択051・終】




「……あれ?」

いつの間にか、親友の部屋に居た。

さっきまでは確かに学校で、
百物語をしていたと思ったんだけど。


俺の親友の部屋は
やたらとサイバーチックな部屋で、
上手い事家具を設置しているのか、
外観よりもずっと広く見えるアパートの1室。

親が海外で仕事してるとかで、
中等部の頃からずっと1人暮らしをしているらしい。


そんな部屋に、いつの間にかいた。



「あれ、どうした?何でいんの?」

相手も不思議そうにしているが

「さあ?」

俺だって知らない。




まあ、不思議な事もあるもんだ。

深く考えるのは止めて、
出してもらった、やたら鮮やかな色のお茶を飲みながら窓の外を眺めた。


街の灯りが見えなくて、
広がるのは一面の星たちだけ。

……いい立地だな。

俺も1人暮らしするんなら、
眺めのいい場所がいい。

そんで彼女をつくって、
いい感じに過ごしてみたい。


未来の自分に思いを馳せ、
いつまでもボーっと景色を眺めていた。