相談ごとに、正しく返したかと思えば、

死ぬ

死ね

殺す

そんな答えが続けて返される。


『○○君は、誰が好き?』と問えば

『あなた  死ね』みたいに。


それが続くと、今度は
段々、正しい返答が返ってこなくなり、
少女も、その友人たちも怖くなりました。


とりあえず、紙を燃やし、
その灰は流して捨て、
使った硬貨は自販機へ。


そうやって道具を手放しました。


これで大丈夫だよね。と、
少女たちは互いに納得したように肯き合いました。





しかし、道具を捨てた翌日の事です。


占いをしていた少女は、
いつまで経っても登校してきませんでした


昼休みを終えた頃、
心配する友人たちのもとへ漸く現れたのは
1日でやつれ、
以前の印象がまったく無い、
少女の姿でした。


それを見て、
また心配する友人たちを指さし、
彼女は言いました。


『みーんな、死ね』


高く笑いながら、
少女は教室の中へと踏み込みます。

そしてそのまま窓へと歩み寄り、
開いていた窓から、身を投げ出しました。




その教室は2階だったらしく、
少女の命は無事でしたが、
何かが憑りついたような状態で、
今もまだ病院に入院しているそうです。


どうして彼女がそうなってしまったのか。


きっと使った道具に
入ったモノを出さないままに
紙を燃やしてしまったから。

行き場の無い中身が、
彼女に入ってしまったんじゃないか。


私は、そう思います。







フーッ



83本目の蝋燭が消えました。




こちらから
向こうが見えるという事は、

それはつまり、
向こうからも見えているんです。


覗く時は、覗かれている。


それをちゃんと覚えておかないと、
ちょっと怖い目に遭う事だってあるんです



例えばこれ、作り話ですけど。



ある所にね、少女がいました。

とても可愛い女の子だけれど、
少々、いやかなり、変わり者の。


その子の趣味は、
壁に開いている穴から、
隣の生活を覗き見る事でした。




最近隣に引っ越してきたのは、
親子3人の家族。

子供は、少女と同い年の男の子。


少女はその少年を気に入って、
覗き穴の向こうが、
少年の部屋という事もあって、
趣味にはますます拍車がかかりました。


一日の始まりは、
少年よりも早く起きて、
ちょっと寝顔を見てから、
目覚ましを止める所を観察する事。


そこから、彼に合わせてご飯を食べ、
着替えを観察しながら自分も着替え、
そしてタイミングを見計らって一緒に登校


そんな生活をしていました。


いつのまにか覗き穴は少し広がっていて、
だけれど少女は気にしません。

相手にバレさえしなければいいのですから

向こうからも見えるはずなんだから、
知られない訳はないのにね?




そんなある日です。

少年が居なくなりました。

隣を見る少女も居ません。



少年の部屋には、
鏡がいくつかありました。

それを使って、
少年は少女を、ずっと見ていたのです。

自分をみる彼女を。
覗き穴を使って。


美しい少女に憧れて。



彼女になりたいと
そう思って、ずっと見ていました。


その欲望に耐えきれなくなった日。

少年は少女と入れ替わってしまいました。


自分が少女に。
そして少年は居なくなりました。


……元の少女はどうしたかって?


除き穴の中ですよ。






ふーっ


84本目の蝋燭が消えました。




喫茶店とか、ファミレスとか
そういう所に行くと、
必ず1つ、水が多く並べられるんですよ。


憑りつかれでもしてるんだろうか。

そう思ってたんですけど、
ある日友達に言われました。


『ずっと言おうと思ってたんだけど、
その、後ろに貼りついてる人誰?』

って。


は?っと思って振り向くと、
鼻の先が付きそうな程近くに、
知らない人の顔がありました。


そいつはずっと、後ろに居たんです。

だからいつも1人多く数えられていたと。


でもね、今でもそいつが一体誰なのか。
そして何のためについてるのか。

さっぱりわからないんですよ。

だから今も、1人多いままです。



本人曰く、『背後霊』だそうですが。

見えない人も多いんですが、
何故かお店の店員さんには
確実に見えてるんですよね。


本当に、意味が解らない。







フッ


85本目の蝋燭が消されました。




小学校の夏休みの宿題で、
絵を毎年提出しなきゃいけなかったんだ。


でもある年、完璧に忘れてた。

思い出したのは、夏休み最後の日。


普通に描いてたんじゃ間に合わない!


だから白いクレヨンで
適当にぐちゃっと描いて、
その上に青い絵の具をひたすら塗ったんだ。


タイトルは『空』で提出した。


先生も呆れてたけど、
ちゃんと受け取ってくれたんだ。


そこまではよかった。



だけど年々、クレヨンを塗った場所。

白く抜かれている場所の形が
変わってきてるんだ。


ただ絵の具が色褪せてきてるんならいいんだけど、
その形が段々、人に見えてきてるんだ。


絵の具の色は青いから、
もう空には見えなくて、
海に浮かんだ水死体?


そんな感じに見えてきてる。


しかも人に見える数が、
同じく年々増えてきてるんだ。


大きい人影は2つ。

小さい人影は3つ。


うちの家族の人数と同じ数に。

小さい3つは、少しずつ、
成長するように大きくなるし。



気味が悪いんだけど、
母さんが捨てさせてくれないんだ。


前に黙って破こうとしたら、
紙の端で手を切っちゃって、
何故かクレヨンの上に血が乗っかるし。

それで余計、気色悪くなっちゃった。



本当、どうしたらいいんだか。





フーッ


86本目の蝋燭が消えました。