音楽を聴きながら、電車を待ってたんだ。


そしたらなんか、
話しかけられた気がして、
『よく解らない時は断っておけ』って
そういう風に言われてた事思いだしたんだ

だからとりあえず
「ノー!お断りします!」って、
そう言ってみた。


……よく思い出したら、
海外旅行に行く前に言われた事で、
日本だったら、聞き返せばいいんだけどさ


でも、そう答えてよかったらしい。


イヤホンを外してみたんだ。


俺に何かを尋ねたらしい、
前に立っていた人は、
今度は俺の隣で、
同じく電車を待っていた人に聞いていた。


『貴方の体、貰えませんか?』


隣の人は、相手の事が
見えていないかのように無視。


……もしかしたら、
本当に見えてなかったのかもだけど。


そしたら、また隣の人って感じで、
その場に居た全員に聞いていたよ。


でも答えてたのは数人だけで、
返事をした人が
周りに変な目で見られてたよ。

多分、俺もそう。


まあとりあえず、
断っておいてよかったよ。








フッ



81本目の蝋燭が消えました。




よく雑誌の広告で、
幸運を呼ぶブレスレットとかあるじゃないですか。


この間友達が、
そんな感じのを着けていたんですね。


どうしたの?って、聞いてみたんです。

返ってきた答えは、

『これね、形見なの。
お祖母ちゃんが買った
幸運のブレスレット!

でもその後すぐに
お祖母ちゃん死んじゃってね、
それを叔母さんが貰って、
でもその叔母さんも死んじゃって、
最期に身に着けてたのがこれなんだって。

叔母さん、子供も居ないし、
私の事可愛がってくれてたから、
これ、叔父さんがぜひ貰ってくれって……
だからね、お守り代わり!』


そう聞いた直後に
彼女、信号を無視した車にはねられて……





私はもちろん思いましたよ。

逆じゃない。って。

全然、幸運を呼んでくれてない。



それでそのブレスレットなんですが、
今は私の手元にあるんですよ。

彼女のお母さんが、
『あの子と一番仲良かったから。
よかったら、貰ってくれない?』って。


そう言われたら、
断れないじゃないですか。

本人も嬉しそうに着けていた物だし。


だから着けてみてはいるんです。

ほら、今もこうやって。






ふーっ



82本目の蝋燭が消えました。





ある所に、占いの好きな子がいました。

その子は、最初の内は
雑誌やテレビ。インターネットなんかで、
誰かが占っている物が好きでした。

だけど段々、物足りなくなって
自分でも占いを始めたんです。


友人たちの間では、
その子の占いが当たると大評判。


彼女の占い方は、
タロットでも手相でも無く、紙と硬貨。

つまりはよくある、
こっくりさんのような物でした。





好きな人の事や、簡単な悩み事。

それらを占っている間は平和でした。


しかし、誰かが言いました。


○○先生は、いつ死ぬの?


それに対する答えは、明日。



偶然なのか、その先生は、
占われた翌日に、事故に遭ったそうです。



それからでした。
占いの結果がおかしくなったのは。




相談ごとに、正しく返したかと思えば、

死ぬ

死ね

殺す

そんな答えが続けて返される。


『○○君は、誰が好き?』と問えば

『あなた  死ね』みたいに。


それが続くと、今度は
段々、正しい返答が返ってこなくなり、
少女も、その友人たちも怖くなりました。


とりあえず、紙を燃やし、
その灰は流して捨て、
使った硬貨は自販機へ。


そうやって道具を手放しました。


これで大丈夫だよね。と、
少女たちは互いに納得したように肯き合いました。





しかし、道具を捨てた翌日の事です。


占いをしていた少女は、
いつまで経っても登校してきませんでした


昼休みを終えた頃、
心配する友人たちのもとへ漸く現れたのは
1日でやつれ、
以前の印象がまったく無い、
少女の姿でした。


それを見て、
また心配する友人たちを指さし、
彼女は言いました。


『みーんな、死ね』


高く笑いながら、
少女は教室の中へと踏み込みます。

そしてそのまま窓へと歩み寄り、
開いていた窓から、身を投げ出しました。




その教室は2階だったらしく、
少女の命は無事でしたが、
何かが憑りついたような状態で、
今もまだ病院に入院しているそうです。


どうして彼女がそうなってしまったのか。


きっと使った道具に
入ったモノを出さないままに
紙を燃やしてしまったから。

行き場の無い中身が、
彼女に入ってしまったんじゃないか。


私は、そう思います。







フーッ



83本目の蝋燭が消えました。




こちらから
向こうが見えるという事は、

それはつまり、
向こうからも見えているんです。


覗く時は、覗かれている。


それをちゃんと覚えておかないと、
ちょっと怖い目に遭う事だってあるんです



例えばこれ、作り話ですけど。



ある所にね、少女がいました。

とても可愛い女の子だけれど、
少々、いやかなり、変わり者の。


その子の趣味は、
壁に開いている穴から、
隣の生活を覗き見る事でした。